トンネルを建設する際の工事に、人工知能(AI)を活用するシステムの試験運用が始まった。総合建設会社の安藤ハザマが、日本システムウエア(NSW)と共同で開発した「トンネル切羽AI自動評価システム」がそれだ。

 トンネルを掘削する最先端部分である「切羽(きりは)」の写真を入力データとして、岩盤の硬さやもろさといった工学的特性を自動的に評価するシステムである。

 新システムの利用シーンは、トンネルを掘削する現場で、岩盤の硬さによって次に掘削する際の火薬の量などを調整する場面だ。岩盤の硬さやもろさによって最適な火薬の量を選択し、支えとなる柱などの設計を調整する。安藤ハザマ土木事業本部 土木設計部基礎技術グループ地質技術チーム部長の宇津木慎司氏は、「岩盤の硬さの評価は、岩盤の工学的特性を評価する伝統的な岩盤分類基準に従って、人間が目視や岩盤を叩いて行う」と従来の手法を説明する。

 この岩盤の工学的特性の評価をAIによって自動化することで、専門家や熟練技術者がいなくても、的確な判断をサポートできるようにすることが新システムの目的である。

 岩盤の硬さの分類は、岩盤中を振動波が進む速度となる「弾性波速度」と相関関係がある。掘削が終了して、切羽の写真と弾性波速度のデータが揃っている2カ所のトンネルのデータを深層学習(ディープラーニング)の教師データに利用した。

 学習に際しては、約500枚の写真を多数に分割して、5万枚分の写真データを作成した。弾性波速度とともに学習させた結果、切羽の写真を撮影すると弾性波速度の値が答えとして得られる。「新システムでは、およそ85%の確率で、切羽の写真から対応する弾性波速度を認識することに成功した」(宇津木氏)と言う。

トンネル切羽AI自動評価システムの概念図
トンネル切羽AI自動評価システムの概念図

掘削工事の自動最適化も視野

 新システムでは、写真を撮影して機械学習サーバーに画像データを送るだけで、岩盤の工学的特性の指標が得られ、難しい操作は不要だ。現在の約85%の認識率も、「専門家がいなくても現場は判断をしなければならない。現場の判断の確からしさを補佐するツールとして、十分に有効」(宇津木氏)との評価だ。さらに新システムの利用によって、岩盤の特性に応じた最適な火薬の量で掘削できれば、掘りすぎや掘り残しによる工数やコストを削減することになる。

 今後、試験運用を通して現場のデータによる蓄積を進めるとともに、トンネル削孔機械と新システムの連携も検討している。「切羽の写真を撮影したら、最適な火薬の量などを計算してトンネル削孔機械が自動的に掘削するといったシステム連携の実現が目標」(宇津木氏)で、専門の技術者がいなくても最適な工事の施行ができる世界を、AI活用で具現化する考えだ。