トヨタ自動車はこのほど、開発中の生活支援ロボット「HSR(Human Support Robot)」を2021年を目処に実用化することを明らかにした。深層強化学習などの技術を取り入れてロボットが自ら学べるようにする。
HSRは小回りの利く円筒型の小型軽量ボディーのロボット。格納できるアームによって床に落ちている物を拾ったり、棚から物を取ってきたりできる。2012年の発表以降、障害者や介護福祉関係者などの評価を踏まえて改良を重ねてきた。
100の機能を順次実現していく
トヨタとしては「良い生活支援ロボットをお値打ちにタイミング良く投入したい」としている。そのために昨年から開発を推進する共同体「HSR開発コミュニティ」を作り、機動力のあるベンチャー企業や先端研究に取り組んでいる大学、ロボットに関する法規整備を進める官庁などと連携を取って、生活支援ロボットの実用化を加速している。
HSR開発コミュニティの加盟機関は、トヨタが貸与するHSRを使って障害者や高齢者などの生活支援ロボットの機能向上のための技術開発を推進している。研究開発の成果をHSR開発コミュニティで共有して加盟機関が利用して技術開発を加速しているという。
トヨタが身体が不自由な30人にアンケートを実施したところ、生活支援ロボットに期待することは、数の多いものから順番に「高所にある物を取ること」「緊急時の対応」「物を拾てもらうこと」「見回り」「何かのものを持ってくる」「遠隔診療」「ペットの世話」「ドアの開閉」となった。
「生活支援ロボットにやってほしい項目は100もある。すべてに対応していったら、実用化に100年もかかってしまう。できるところから順次開発して実証実験を行い、5年ぐらい(2021年頃)で実用化したい」

トヨタ自動車の玉置章文・パートナーロボット部長はこう話す。10月21日に六本木アカデミーヒルズで開催された官民ワークショップのパネルディスカッション「技術革新による、豊かな高齢化社会実現に向けて」でのことだ。同ワークショップは、10月19日から22日まで京都と東京で文部科学省が開催した「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」のセッションの1つ。
パネルディスカッション終了後に玉置部長は「今後は、深層強化学習を適用して、ロボット自身で様々な動作を学習できるようにしたい。そのために、今年1月米国シリコンバレーに設立した米トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)と連携していく」と語った。
トヨタが生活支援ロボットの実用化を急ぐ背景には、要支援者を支える人が急速に減っていく少子高齢化社会の深刻な状況がある。このままいくと2050年には3人の要支援者を4人で支えることになる。こうした事態に対してトヨタは、1.5人の要支援者を6人で支えていた2000年レベルに戻そうとしている。そのために生活支援ロボットの実用化を急いでいる。