千葉市は今年8月、東京大学と連携し医療費の抑制などに向け、ビッグデータの活用を本格化した。国勢調査や国民健康保険など市民のデータと市が保有する複数データを掛け合わせて分析し、可視化。課題解決に向けた切り口を見いだす狙いがある。

 医療や介護の要因、治療法の評価分析、医療費の推計などが目的である。2017年6月までの3年間のプロジェクトとして取り組んでおり、今年8月から本格的なビッグデータ分析に乗り出した。

千葉市は東大と連携してビッグデータ活用に乗り出した
千葉市は東大と連携してビッグデータ活用に乗り出した

 具体的には、国保データベース(KDB)からレセプトなど医療や介護に関連するデータを抽出したうえで、個人情報は生年月日を年月に限定したり、住所を郵便番号に省略するなどの匿名化を実施。匿名データを東京大学大学院医学研究科の分析環境に持ち込んで分析を始めた。

 千葉市総合政策局 総合政策部の積田正弘統計課長は「厳重な匿名化を行い所定の手続きをしたうえで、医療分野の専門的な知見で分析していただく」と狙いを説明する。千葉市はデータを提供するにあたり市民や弁護士、有識者や専門家で構成する「千葉市個人情報保護審議会」、東大は「医学系研究科倫理審査会」でそれぞれ承認を得た。

 現在データのクレンジングを行っている段階で、来年3月をメドに最初の分析結果が出る見通しだ。

東大の分析官が週2回勤務

 千葉市は既に昨年からビッグデータ活用に取り組んでおり、東大大学院からデータサイエンティストを非常勤嘱託職員として派遣してもらい週2回勤務している。「嘱託の職員として働いてもらうことで、市の業務を理解しながら効果的なビッグデータ分析の切り口を見いだしてもらいたい」(積田課長)。

がんを除いた生活習慣病を中心に症例の関係をマッピングした(作成:東京大学大学院 特任講師 村舘靖之氏)
がんを除いた生活習慣病を中心に症例の関係をマッピングした(作成:東京大学大学院 特任講師 村舘靖之氏)

 KDBをはじめとして市の保有する各種のデータを洗い出して、新たな分析の切り口の提案を行っている。例えば、KDBのデータを利用し、疾病ごとの関係をネットワーク図としてビジュアライズし分析した。「ツールで可視化する発想はなかった。現在起こっていることを大づかみで理解するのに役立つ」(統計課 解析班の竹内公平主査)。このほか千葉市の産業構造や人口特性などのデータを分析し、市の職員が政策を検討する際にアドバイスを与えている。

 千葉市の三木浩平総務局次長・CIO補佐監は「これまでは一律の行政サービスだったが、データを分析していくことでそれぞれの市民にあった内容を提供できるようになり、市としてもコストを適正化できるようになる」とビッグデータ活用の狙いを語る。

 これまでの取り組みを踏まえて、8月からデータを東大に持ち込んで健康医療の専門データの知識、他の外部データと掛け合わせ、課題解決に本格的に乗り出したのだ。

 分析人材がいなかったり、個人情報の扱いが難しかったりで多くの自治体がビッグデータ活用に二の足を踏んでいる。千葉市の取り組みはそうした自治体の課題を解決する1つのモデルとなる。