気象情報会社のウェザーニューズは人工知能(AI)の活用を加速している。雲の色や形状などからゲリラ雷雨の発生を予測したり、天気予報を読み上げるバーチャルキャラクターの学習精度向上に活用したりしている。気象サービスはまさにビッグデータを多く蓄積しており、的確な分析にはAIの活用が必要不可欠になっている。

 「大量のユーザーからの情報が集まってきているが、それらをタイムリーに処理するには人手ではもはや不可能」。ウェザーニューズのコンシューマー向けのサービスの責任者である石橋知博執行役員はこう語る。

 同社は「ゲリラ雷雨スカウター」と呼ぶサービスで、全国の利用者にスマートフォンのアプリから投稿してもらった雲の情報を分析し、どのような性質の雲であるのかの情報を教えるサービスを提供している。その過程で得た雲情報を独自のレーダー情報と掛け合わせて分析し、ゲリラ豪雨の発生場所や確度などを予測。そのエリアにいるユーザーにゲリラ豪雨発生の警報を送っている。

ユーザーの投稿を基にしたゲリラ豪雨の解析画面
ユーザーの投稿を基にしたゲリラ豪雨の解析画面

 この雲の分析に2014年からAIの活用を始めた。参考にしたのが予報技術者の思考過程である。「一線の予報技術者が雲のどこを見て、危険な状態かどうかを判断しているのかをインタビューしながら予測モデルを組み上げた。雲の色だけでなく、雲の高さや輪郭の状態など様々なポイントで判断していることが分かりモデルに組み込んでいった」(石橋執行役員)。

 ゲリラ豪雨の発生が予想されるエリアにいるユーザーにアプリで雲の投稿を依頼している。依頼後は3秒に1回の投稿があり、これらを迅速に解析するためにAIが必要不可欠だった。最終的に年間約50万枚の雲の写真が蓄積され、実際にゲリラ豪雨が起こったかどうかの正解データを基にモデルの改善を行っている。

 AIを活用することで、ゲリラ雷雨の捕捉率が2008年の開始当初の7割弱から2015年には9割まで向上。ゲリラ雷雨の警告メールがサービス開始の21分前から50分前まで前倒しできている。2016年平均では59分前まで約10分前倒しができそうだという。

 学習の精度を上げるにはより多くのデータが必要だ。そこで2014年から投稿してもらったユーザーに、雲を解析して「モクモク雲」「発達レベル:67」といった情報を表示するようにした。この情報を提供することで、投稿数が前年比で2.5倍になったという。

バーチャルキャラの学習にもAI活用

Airiと天気情報について会話ができる
Airiと天気情報について会話ができる

 一方でFacebookメッセンジャーで問いかけられたメッセージに対応するボットのサービス、「ウェザーロイド Airi(アイリ)」でも、AIを活用している。自然言語処理を利用してユーザーの問いかけた内容を理解したり、どのような言葉を返すべきかを学習している。

 Airiは今日・明日や週間のある場所の天気や台風情報の提供、気象用語の解説などが可能だ。例えば、「板橋区の週間天気予報」と入力すると、週間天気と気温を返してくれる。また、「東京のモーニングメッセージを送ってほしいな」と入力すると、毎朝6時にその日の天気情報を送ってくれるようになる。

 Airiは同時に数百万のユーザーと“会話”が可能であり、石橋執行役員は「天気のやりとり以外に、生活者がどのようなことを考えているのかを知るために活用できそうだ」と見る。例えば、「暑いね」という会話が多ければ、その場所の体感が悪いと考えることができる。石橋氏は「仕入れのなどの判断に使ってもらうため、会話のデータを分析したうえで食料品メーカーやスーパーに提供することもあり得る」と今後の可能性を語る。