投資用マンションの開発を手掛けるインヴァランス(東京都渋谷区)は2018年から、人工知能(AI)で設備を制御できるマンションの販売を始める。入居者の好みをAIが学んで快適に暮らせるようにして、マンションの価値を高める狙いがある。

照明のオン・オフやカーテンの開け閉めをAIがコントロールする
照明のオン・オフやカーテンの開け閉めをAIがコントロールする

 投資用マンションの開発を手掛けるインヴァランス(東京都渋谷区)は2018年から、人工知能(AI)で設備を制御できるマンションの販売を始める。入居者の好みをAIが学んで快適に暮らせるようにして、マンションの価値を高める狙いがある。

 スマートホーム向けAI開発の米ブレイン・オブ・シングス(BOT)に出資し、共同でAIマンションの開発を進めている。今年9月には東京都港区でモデルルームを使った実証実験を始めた。

 実証実験ではインヴァランスの従業員が実際にAIマンションに住むことで、生活に関するデータを蓄積している。「(AIの反応速度など)今の品質では、分譲マンションとしてそのまま商品化することは難しい」(インヴァランスの小暮学社長)。そこで、実証実験を経て、AIの学習や機能改善に取り組む。

 AIマンションには、BOTの開発する「Caspar(キャスパー)」と呼ぶAIが搭載されている。このCasparが照明やカーテンのレール、給湯器などの設備を制御する。さらにAIが居住者の生活習慣を学習することで、照明の明るさや室内の温度といった細かな点も居住者の好みに合わせて自動調整するようになる。

 Casparは2つの方法を組み合わせて居住者の生活習慣を学習する。1つ目は居住者がCasparと直接コミュニケーションを取る方法だ。AIマンションにはリビング、寝室、洗面所などにCasparと会話をするためのスピーカーが設置されている。このスピーカーに向かって、「Caspar」と呼びかけることでAIとの会話が始まる。Casparに音声で「カーテンを閉めて」といった指示を出すだけで、カーテンが閉まる。

AIの「Caspar」を搭載したマイク・スピーカーを通してコミュニケーションする
AIの「Caspar」を搭載したマイク・スピーカーを通してコミュニケーションする

 ただし、音声による機器の操作データだけでは居住者の好みまでは把握できない。そこで、もう1つの学習手段として、居住者の行動データを用いる。AIマンションには壁に設置された照明のスイッチなど、さまざまな接点にセンサーが埋め込まれている。部屋の角には居住者の行動を記録するカメラが設置されている。これらのセンサーやカメラで取得したデータを使って、生活パターンを読み解く。例えば、Casparが照明をつけたが入居者が少し暗く調整したら、その明るさが好みだと学習し次からその設定でつけるようにする。

 映像解析の仕組みを1つ紹介しよう。Casparはカメラに映った人の動きを分析して、複数の行動パターンから最も当てはまる行動を推測する。具体的には、部屋内を人がゆっくりと歩いている場合、「料理を運んでいる」「掃除機をかけている」といった複数の選択肢の中から、最も可能性の高い行動を読み解く。それにより、人が屋内でどんな行動を取っているかを学習する。

 「人は家の中で電気をつけたり、戸締まりをしたりといった約90種類の行動をする。そのうち80種類をAIが代替できる」。BOTのアシュトシュ・サクセナCEO(最高経営責任者)はAIマンションでこんな暮らしを実現できると説明する。IoT(モノのインターネット)がいよいよ、消費者の生活を大きく変えようとしている。

3つのレイヤーでシステムを構築

 「当社の住宅制御のシステムは3つのレイヤーに分かれている」とBOTのサクセナCEOは説明する。

 最も上のレイヤーは居住者の生活習慣を学習するレイヤーだ。室温の好み、照明の明るさなどを解析する。この好みに合わせて、2つ目のレイヤーに位置付けられるAIが、どの設備や家電製品を動かすべきかを判断する。最後は住宅設備や家電製品をコントロールするレイヤーだ。AIの指示の下、Wi-Fiや無線通信企画「Z-Wave」などで、住宅設備や家電製品を実際に動かす。

 入居者が他のマンションに移転した際、Casparに対応していれば、それまでに学んだ好みのデータも移転できるようにすることを検討しているという。

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