ソフトバンク子会社のPSソリューションズは、優秀な農家のノウハウを伝授するソリューション「e-kakashi(いいかかし)」の販売を始めた。センサーにより温度や湿度などを見える化するだけでなく、対処法を提示する「ek Recipe(ekレシピ)」などのWebアプリも提供する。

 「ほかのソリューションに比べて優れている点は、温度が上がったり、下がったりといった環境の変化を見える化するだけでなく、どう対応したらいいかガイダンスすることだ。そのためのアプリケーション『ekレシピ』を提供する。培われた栽培管理技術やノウハウを料理のレシピのように蓄積できる。また、大規模な圃場でなくても手軽に導入できるのが特徴だ」

 こう話すのは、PSソリューションズ農業IoT事業推進部の山口典男部長だ。

 e-kakashiは、温度や湿度、日射量、土壌水分量などの農業データを活用して栽培手法や知見を共有する農業IoTソリューション。田んぼや畑といった圃場に、センサーネットワークを張り巡らす。そうしたセンサーから、圃場の温度や湿度、日射量、土壌内の温度や水分量、二酸化炭素などを計測し、データを収集する。

 それらの収集データは、通信モジュールを内蔵した親機を経由してクラウド上に送信して管理する。利用者は、パソコンやスマートフォンなどによって栽培時に必要となる様々なデータを見ることができ、栽培の指導や農作業の品質管理、効率化に活用できる。

温度や二酸化炭素量などをグラフ化
温度や二酸化炭素量などをグラフ化
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 親機である「e-kakashiゲートウェイ」は、子機から収集する取得データをクラウドに転送する収集装置。100台の子機に対応できる。子機である「e-kakashiセンサーノード」は、圃場における環境情報を収集し、親機に送信する電池駆動の装置だ。温度や湿度、日射量、土壌水分量などを測る様々なセンサーと接続できる。920MHz帯の無線を使用し、最大1km離れた親機にデータを転送できる。

 親機1台、子機1台の場合、機器代金は74万9600円から、月額利用料は7980円からになる。月額利用料にはWebアプリの利用料、通信料、機器管理料、クラウド利用料が含まれる。なお、温度や湿度、日射量などのセンサー代は別途必要になる。e-kakashiの出荷開始は今年12月下旬。

 なお、同ソリューションは日立製作所と共同開発した。日立は、農場に適したセンサーネットワークの機器開発からクラウドコンピューティング環境の提供まで総合的に支援している。

与謝野町では稲作農家7軒が導入

 京都府の与謝野町は2013年夏からe-kakashiのプロトタイプを導入している。同町役場農林課の井上公章主任は、「京都府の農業指導員を通じておいしい米を作っている稲作農家のノウハウをekレシピに入力して今年から7軒の農家の方々に活用していただいている。丹後産コシヒカリを作っており、西日本としては最多となる12回の特A(日本穀物検定協会)評価を受けているが、匠の知見を伝授して地域全体の稲作の品質を引き上げたい」と話す。特A評価は、新潟県の魚沼などと同じ最高レベルだ。

 与謝野町が作成している稲作のekレシピは、育成ステージや温度、水量などの環境変化に合わせて数十のガイダンスを用意している。例えば、ある育成ステージである一定以上に温度が上昇した場合に、「水をかけ流し水温を下げましょう」といった処方箋を提示する。

ekレシピの画面
ekレシピの画面
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 与謝野町では現在、約1000人が農業に従事している。稲作を手掛けて販売している農家は約600軒。e-kakashiによってレベルアップを図る。

 山添籐真町長は「与謝野町で作る『丹後産コシヒカリ』のブランド力を高めるとともに、若い就農者に楽しんで取り組んでもらえるようにして間口を広げたい」と話す。今後は、新規就農者が手掛けやすいハウス栽培などで作る京野菜のekレシピを作成する計画だ。

 山口部長は、「ドローンで作物を撮影して、画像をディープラーニングで分析することも検討している。生育状況を葉っぱの画像から見たり、害虫の存在なども把握できたりするようにしたい」と、今後の展望を語る。