NTTコミュニケーションズと三井化学は9月、ガスの製造過程において20分後のガス濃度を誤差±3%で予測するアルゴリズムを共同開発した。ガス濃度の異常を知らせるシステムなどへの活用を想定する。

 同アルゴリズムは、ガス製造過程における温度や圧力、流量データといった51種類のプロセスデータと20分後のガス濃度データ(実測値=正解データ)をセットにした教師データを深層学習(ディープラーニング)させた学習済みモデル。

 51種類のプロセスデータは、ガス濃度を監視している作業員が確認するために1分おきに計測している。51種類のデータに対して、20分後のガス濃度データをセットにした教師データ1カ月分を深層学習させた。

 学習済みモデルを検証するために、その後10日分の51種類のプロセスデータから予測した20分後のガス濃度の値と、ガス濃度の実測値を比較した。

 次に、最初の学習期間から半月後にずらした1カ月分の教師データを深層学習させた。同じようにその後の10日分データで学習済みモデルの精度を検証した。これを繰り返して計6回深層学習を実施した。それぞれの学習は独立に行っており(そのたびに初期値をリセットしており)、誤差±3%は6回の平均値となる。

 今回開発した学習済みモデルの誤差が±3%だったことに対して、「三井化学からは許容できるレベルだとの見解をいただいている」(NTTコム)という。現段階では、まだガス製造に実装していないが、NTTコムは将来の応用事例を以下のように提示している。

 例えば、20分後にガス濃度がある一定の値を超えると予測した場合に、異常を知らせるシステムだ(下図)。異常の予測を知った作業員は、20分間で様々な対応に動くことができる。

深層学習を活用して、20分後のガス濃度品質を誤差±3%で予測
深層学習を活用して、20分後のガス濃度品質を誤差±3%で予測

学習モデルは三井化学が所有権

 今回活用した深層学習は、NTTコムが独自開発したマルチレイヤー(多層)パーセプトロン。レイヤー数は公表していない。1カ月分の教師データは60分×24時間×31日で4万4640件のデータセットとなる。容量は約10Mバイト。米NVIDIA製GPU(画像処理用半導体)を搭載したエンジンで数分で深層学習できたという。

 教師データと学習済みモデルの所有権はいずれも、三井化学に属しているという。NTTコムには学習済みモデルを開発する際のノウハウが蓄積されていく。

 NTTコム技術開発部の伊藤浩二担当課長は「今回開発した学習済みモデルは、三井化学の反応炉専用になる。人やクルマ(種類、色など)を認識する学習済みモデルの場合は汎用性はあるが、製造するガスごとに学習済みモデルを開発する必要がある」と語る。

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