映像解析プラットフォーム提供のフューチャースタンダード(東京都文京区)が今年中に、映像処理専門の人工知能(AI)のアルゴリズム市場を始める。オムロン、NEC、PUX(東京都港区)、東京大学など国内外の企業・団体がAIアルゴリズムを提供、利用企業は必要なアルゴリズムを選択してアプリケーション(アプリ)を開発できる。

 同社が提供する映像解析プラットフォーム「SCORER(スコアラー)」の一部としてアルゴリズム市場を提供する。SCORERは2016年10月に提供を開始。これまではPCボードにWebカメラを接続した端末「SCORER スターターキット」(期間限定価格9800円)、IoT・カメラ向けデータ通信サービスなどを提供し、端末内で処理できる通行人検知、顔検知、車両検知といった基本的な映像解析アルゴリズムを使ったアプリを開発可能にしていた。

 例えば、ガーデニングショップチェーン「IN NATURAL」を運営するクレスト(東京都千代田区)は、店内・店頭の通行量や、商品棚の注目率などを測定して、最適な店舗内の棚配置、商品配置などの検討に活用している。

 フューチャースタンダードは年内にクラウド版SCORERの提供を開始し、クラウド上でより高度な映像解析のAIアルゴリズムを利用できるようにする。

トルコ警察活用のAIも提供へ

 AIアルゴリズムは自社で用意するのではなく、顔検出や年齢・性別推定ができるオムロン、顔向き推定や表情認識ができるNEC、自動車のナンバー認識ができるPUXのアルゴリズムのほか、ディープーラーニング(深層学習)を活用した東京大学の人検出、同じく深層学習を活用した中国センスタイムの人流解析や顔検出アルゴリズムなどを利用できる。

中国センスタイムは人、クルマの大小やバイクを識別できる(フューチャースタンダード資料より)
中国センスタイムは人、クルマの大小やバイクを識別できる(フューチャースタンダード資料より)

 センスタイムの技術は、顔を認識して加工できる人気動画メッセージアプリ「SNOW」に採用されたことで知られる。単にクルマ、バイク、人を識別するだけでなく、クルマでもバン、SUV、小型トラック、大型トラックなどのレベルで識別できる。

 今後は「トルコ警察で利用されているアルゴリズムやシンガポール企業のアルゴリズムも加わる予定」(藤井大地戦略財務担当)で映像解析に特化しながらも種類を増やしていく。

 利用料金は正式発表時に決めるが、「スマートフォンのアプリストア同様に、プラットフォーム運営企業としてアルゴリズム利用料の3割程度を当社が受け取り、残りは開発企業へ還元したい」(藤井氏)との方針。

 2018年には、クラウド上でアプリを開発できる環境も整備する。藤井氏は「人を検知するAIアルゴリズムでもアプリ次第で店内の動線解析に使えたり、進入禁止エリアの検知に使えたりする。活用法は発想次第で広がるので、アプリを開発するSIerなどのパートナーも広げたい」と語る。将来的には、AIのアルゴリズムだけでなく、AI活用アプリのマーケットプレイスも提供する方針だ。

環境センサーにも対応

 映像以外にもサービスを広げることを検討中だ。SCORERを応用して、環境センサーから取得したデータを分析できる仕組みの開発も進める。東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻の山崎俊彦准教授と共同で、集合住宅の物件の上層階と下層階にセンサーを設置し、日当たり、温度、湿度などを計測し、不動産の価格にどう反映されているかを研究している。

 また、東京都八王子市の保育園では温度やCO2などを計測して、CO2の値が一定以上になったら窓を開けて換気する対策などの有効性などを検証した。今後実験する保育園数を増やして、来年に研究結果を学会などで発表した後に、本格的な事業化を検討する。人手不足の問題もあり「保育園からの引きはとても強い」(藤井氏)と言う。

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