警視庁は車のプローブ情報を活用した渋滞解消に本格的に乗り出した。3月にプローブ情報分析システムを構築しており、来年3月までに東京都内の交差点3カ所で改善施策を実施する。

 警視庁は、ナビタイムジャパン(東京都港区)が提供するスマートフォン向けカーナビゲーションサービス利用者の東京都全域のプローブ情報を入手し、改善効果が大きい交差点を洗い出した。対象期間は2014年8月1日から同年10月31日の3カ月間。

 見直し対象の洗い出しのポイントは、交差点への流入台数に加えて、「旅行(走行)速度が低い」「停止回数が多い」「停止線からの停止距離が長い」「流入経路間で旅行速度差や停止回数差が大きい」ことだ。ナビタイムから入手した交差点間の旅行時間などのデータから算出している。

 結果として、小石川税務署前交差点(東京都文京区)、見次公園前交差点(東京都板橋区)、金町二丁目交差点(東京都葛飾区)の3交差点を選んだ。

交通需要の変化に対応できない交差点

 小石川税務署前と見次公園前の交差点は車両感知器を設置しておらず、交通情報を基にしたリアルタイム信号制御ができない。いわゆる「定周期制御交差点」だ。都内には約1万5000基の信号機があり、約半数は任意時点の交通状況を基にあらかじめ作成されたパターンで制御する。残りは車両感知器で検知した渋滞状況から、信号の点灯時間をリアルタイム制御できる「集中交差点」に設置された信号だ。

 警視庁は特に、定周期制御交差点が交通需要の変化に十分に対応できていないことを課題視していた。この課題に対応するため、2013年度にトヨタ自動車、ホンダ、パイオニアの3社からプローブ情報を入手。3km四方の限られた地域ながら、この情報を活用した信号制御について検証を行った結果、定周期制御交差点において信号制御秒数の見直しの効果が得られた。

 「平均速度を時速10kmほど上げたり、停止回数を減らしたり、秒単位で信号の待ち時間を減らしたりできることが分かった。渋滞を緩和させることができる」と、警視庁交通部管理官で交通管制課課長代理の中井麻衣子警視は話す。

 そこで2015年3月、警視庁はプローブ情報分析システムを構築。民間から入手するプローブ情報の分析結果を活用して、信号制御の最適化を図っていくことを決めた。プローブ情報で、車両感知器などが設置されていない定周期制御交差点の交通状況を把握する。金町二丁目交差点のように、集中交差点だが側道に感知器が設置されていない交差点の分析にもプローブ情報を活用する。

西に向かう車は停止回数が約30倍

 小石川税務署前交差点を例に課題を説明しよう。同交差点は小石川税務署前の都道434号にありT字型となっている。都道434号を西から東に向かって進入する場合に比べて、東から西に向かって進入する場合の方が速度低下が見られた。つまり後者の方が渋滞していることが分かった。また、交差点通過後に西へ向かう場合に停止回数が西から進入する場合の約30倍だった。小石川税務署前交差点の隣接交差点における先詰まり状況がうかがえた。渋滞を緩和する対策の1つとしては、西側に隣接する交差点の青信号点灯時間を延ばすことを検討している。

西から東に向かって進入する場合に比べて、東から西に向かって進入する場合の方が渋滞していることが分かった
西から東に向かって進入する場合に比べて、東から西に向かって進入する場合の方が渋滞していることが分かった

 警視庁は抽出した残り2つの交差点についても、課題と対策を検討した。来年3月までに対策を実施して、その改善効果をプローブ情報で検証する計画だ。

 警視庁は一連の分析の結論を、10月5~9日に仏ボルドーで開催されたITS世界大会2015で講演し、論文「プローブ情報を活用した信号制御の最適化に向けた取組について」として発表している。

 「プローブ情報を分析することで、車両感知器が設置されておらず交通状況を捉えることができなかった交差点において、旅行速度・走行台数・停止回数・停止位置という値を経路別・時間帯別にとらえることが可能となり、問題の生じている信号交差点を抽出し、対策案の方針決定に有効であることを示すことができた」

 今後は、季節変動などを考慮するために1年を通したプローブ情報を活用する。今年度は、トヨタの専用車載通信機を搭載する車から収集した情報を提供するトヨタメディアサービス(名古屋市中区)から、2015年1月~12月のプローブ情報を入手する。

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