東急カードは顧客の購買行動を分析するツールを活用し、リボやキャッシングを利用していない顧客に対する電話による勧誘の成功率を引き上げることに成功した。一般的に0.3~6.9%とされているが、10.6%まで向上させたという。顧客の性・年齢や家族構成などのパーソナルデータを一切使わず、カードの利用の購買データのみでリボやキャッシングの見込み顧客をあぶり出した。

 今回活用したツールは、広告代理店の東急エージェンシーが、産業技術総合研究所(産総研)などと開発した「ターゲット・ファインダー」。ID-POSのようにIDと購買状況が結び付いたデータを、PLSA(確率的潜在意味解析)と呼ぶ手法で自動的にグルーピングする。

 東急カードは購買データのうち商品やサービスを百数十にジャンル分けしている。そのうえでツールに購買データを入力し、あらかじめ設定した28のクラスターに分類した。

購買情報だけで自動分類

 まず28に分かれたクラスターを見て、「IC乗車券」「百貨店」「スーパー」「ガソリンスタンド、クルマ用品、住宅、保険、ネット食料、ゴルフ、海外」「アパレル・レジャー」「ブランド系」「携帯料金、新聞」「ホームセキュリティ、家電、電子マネー」「通信回線」「ネット利用」「ビジネス利用」「スポーツ、ETC」というように名付けしていった。東急カード ネットビジネス部の大沼和樹課長は「クラスターに分類してみると、どういう顧客なのかが分かってくる。これまで主として購入総額などで把握してきたが、顧客のことを分かっていなかったのかもしれない」と振り返る。

 このうち、リボ払いやキャッシングの予備軍は、「あとりぼ、キャッシング」「いつリボ、店リボ」のクラスターに所属する顧客である。コンビニでカードを利用する顧客や、リボ払いの比率の高い札幌店で買い物をする顧客もこれらのクラスターに分類される可能性があるという。

 顧客の購買行動から、ツールがこの2つのクラスターに所属する確率を算出する。この確率の高い顧客から電話で勧誘をしていった。

 具体的には、5000人の顧客に対して合計で7500回の勧誘電話を実施。1900件が相手につながり、約1割の顧客がリボやキャッシングを利用するに至ったという。「1回目の試みでここまで高い確率になるとは思わなかった」(大沼課長)。導入コストとしては「2回ほどで元がとれるのではないか」(同)。

 カード会社各社は収益の確保に向けて、リボ払いやキャッシングによる金利手数料の獲得を図っている。ただし各社が一斉に乗り出しているため、利用額の大きな顧客に大量のダイレクトメールが届くようになり、期待した効果が得られていないという。こうしたなかで、まったく新規の見込みの高い顧客をあぶり出せたのは価値が高い。

 東急カードは今後、リボやキャッシングだけでなく、退会しそうであったり、他社の製品やサービスを購入しそうな顧客を見いだすのにも活用していく考えだ。「新規の顧客を開拓するためのツールとして他業種に売り込めるかもしれない」(大沼課長)と期待を寄せる。

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