米アルパカ(カリフォルニア州サンマテオ市)は10月初頭、個人投資家向けに、取引履歴を基にトレーディングアルゴリズムを自動的に構築するクラウドサービス「Capitalico(キャピタリコ)」の提供を開始した。同社は横川毅CEO(最高経営責任者)をはじめ日本人が経営陣を務める企業。まず、為替取引向けサービスを、日本やアジア向けにクローズドβ版として開始した。将来的には為替以外にも広げ、世界展開を目指す。
横川CEOは、「アルパカアルゴ」の独自性についてこう話す。
「世間にあるような、膨大な金融市場のデータを無差別に取り込んで近未来を予測しようとしているのではない。専門家であるトレーダーがそれぞれで行っている独自の判断パターンをディープラーニング(深層学習)技術によって高精度に学習して、自動で複製するサービスだ」
個人投資家向け月額99ドル
各トレーダーは、チャートでの値動きを参考にしたテクニカル分析を用いて、短期での売買のタイミングを探ることが多い。例えば、複数の移動平均線の動き方や位置関係から、「買い」か、「売り」か、あるいは「取引すべきでない」ことを判断している。その判断のタイミングについてディープラーニングで学習させる。
売買のタイミングの特徴を高精度に自動抽出することで、過去の取引に適用した場合のパフォーマンスを検証したり、それを実取引に用いたりすることで、トレーダーの取引判断の精度を向上させる。
これまでトレーダーが手作業でやっていたことをプログラミングを必要とせずに自動化するので、負荷が大きく低減される。特徴量を高い精度で抽出できるディープラーニングの登場によって実現した。過去の取引履歴を管理でき、トレーディング戦略に関する仮説検証を素早く行えるようになる。
個人投資家向けで基本月額使用料は99ドル。人数を限定したクローズドβ期間にフィードバックを受けながら完成度を高めて、来年初頭にパブリックβ版をリリースしてさらに改良を重ねていく。
同社の試算では、世界では約3億件の個人投資口座が存在し、そのうち為替の口座は約5000万件。また、世界の為替市場では毎日約5兆ドルの取引が行われており、そのうち個人投資家による為替取引額は約2500億ドルに上るという。
横川氏は、「個人投資家全体の5~10%しか利益を上げていない。どうしたらいいかと言えば、過去のデータに対する仮説検証を地道に繰り返す必要がある。最終的に少なくとも過去データに対して利益が出る投資戦略を確立する必要がある。利益が出る投資戦略が確立できれば、売買のタイミングが分かるアルゴリズムを自動生成すればいい」と言う。
横川氏は、リーマン・ブラザーズ証券(2008年秋に経営破綻)、野村證券の債券本部で計6年間勤務。投資商品の開発を手掛けた。その後、3年の自己勘定での為替トレーダーを経て、直近では、システム開発会社の共同代表を務めた。