作業服販売店チェーン最大手のワークマン。作業服や作業関連商品専門店としては、店舗数が745店舗で2位(約50店)以下を大きく引き離している。2015年3月期は過去最高の純利益を更新した。公共事業が増えて、2016年3月期も増収が見込まれ、最高益更新になるもよう。

 ただ、このままではいずれ成長できなくなるという。「中心的な顧客であるプロの作業者が減っていくからだ」(ワークマンの土屋哲雄常務)。そこでいま取り組んでいるのが、一般顧客を増やす戦略だ。例えば、機能性が高く、一般顧客に受けるカラフルな色の作業服をリーズナブルな価格で販売する。そのために、新たなデータ活用施策を導入した。

顧客層拡大で販売数を見誤る

 ワークマンには、ポイントカードはない。作業服市場では独走状態のため、コストや手間をかけてカードを発行する理由がなかった。ところが、一般消費者へと顧客層を広げていくうえでは、年齢層を把握する必要がある。特に若い一般顧客の来店が多い店であれば、カラフルな色を揃える必要がある。グレーやブラックなど地味な色を買うプロ作業者とは大きく異なるのだ。

 2015年夏に発売した戦略商品「ストレッチ透湿防水ウエア」は、7万~8万着作ったが、一般顧客を意識した黄色が1カ月で売り切れた。そこで8月末に黄色を中心に数万着を追加発注した。同商品はゴアテックスに近い機能性を持ちながら、上下で4900円という低価格を実現した。そこで、一般顧客にも販売したが、予想以上の反響で、販売数を見誤ってしまったのだ。

 「一般顧客がどの程度購入しているのか、データを取るために今夏、埼玉県川口市と大阪府高槻市の2店舗に大手ICT企業の顔認識システムを導入した」と、土屋常務は説明する。レジにカメラを設置して顧客を撮影。性別と年齢を自動識別している。各顧客には6桁のIDを割り振り、何時何分にどんな顧客が何を買ったかを記録する。再度来店したかどうかも把握できるという。なお、撮影した画像は残さない。

レジに設置したカメラと顔認証システムで、購入者の性別と年齢を自動識別する
レジに設置したカメラと顔認証システムで、購入者の性別と年齢を自動識別する

 土屋常務は、「一般顧客は1カ月1回も購入しない。1カ月に1回以上購入する顧客はプロの作業者だと見ている。一般顧客がどのくらい購入しているのか、(店舗を分ける)24のクラスターごとに把握していく」と話す。2店舗の状況は2015年11月に判明する。現段階では、高槻店は女性比率が約15%と川口店より高いという。

 ワークマンの場合、顔認識システム導入の目的が明確だ。店舗クラスターごとに一般顧客の購入比率と年齢構成を把握して、色の品揃えなどで無駄な発注をなくしたいのだ。今冬向けに、布が30%伸びる2900円の防寒用ジャンパーを10万着作った。「通常なら3万円程度するもので、発注する色の比率を間違って、もし5万着余ったら損になる」(土屋常務)と言う。

 ワークマンは、一般顧客向け「アウトドアのファストファッション」業態の立ち上げも視野に入れている。エキナカや駅ビル、繁華街の路面店など、これまでワークマンが出店したことがなかった場所で新たな成長を目指す。