動悸、息切れなどの際に使う強心薬を開発・販売する救心製薬(東京都杉並区)は、ID-POS分析などを活用してビジネスパーソン向けの製品を開発し、新たな市場を開拓した。

 救心製薬の主力製品である「救心」は60代から70代が主要顧客であるが、より若い世代に売り込めるのではという仮説を長年持ち続けていた。堀厚副社長は、「動悸や息切れは疲労だけでなく、ストレスも引き金となる。そのストレスを多く抱えている30代から50代に訴求できていなかった」と語る。強心薬の市場で救心は約9割のシェアを占めており、成長するためには新たな市場を開拓するしかない。

 こうした長年の課題に対応するため、2015年に開発を完了したのが「救心錠剤」。従来の救心では大人2粒の服薬数を1粒のタブレットで済むようにした。ケースもコンパクトなものにして、携帯性を持たせた。

 こうしてコンセプト通りの製品を開発したものの、「そもそも従来の救心の購入層について、データで精緻に把握できていなかった」(堀副社長)との懸念があった。

 そこで、ドラッグストアやスーパーなどのID-POSデータを収集、分析する、カスタマー・コミュニケーションズ(東京都港区)の販売データ分析サービスを利用し、現状を把握することにした。

 すると救心購入者のうち70代女性が16.52%、60代女性が15.89%と圧倒的に多かった。男性でも70代の7.51%、60代の7.34%が多い。「想像以上に40~50代に売れていない」(堀副社長)ことを把握した。

 こうしたことから、新製品の救心錠剤で、主要顧客を30代から50代までおよそ20~30歳も若返らせるプランを実行するため、データを基にしてあらゆる手を打っていった。

 まず若い層に受けるように、パッケージの製品名に直線的なフォントを採用。「KYUSHIN TABLET」のように初めてアルファベットでも表記した。さらに、CMのタレントには34歳の男性俳優の高橋光臣氏を採用し、「責任世代に救心錠剤」というメッセージを打ち出した。

新規顧客が7割以上に

 結果として、狙った通りに、購入者が若い層に20~30歳もシフトした(下図)。さらなるID-POSデータの分析でも、救心錠剤の購入者の7割以上が過去1年間に「救心」を購入していない、新規の顧客だった。

救心および救心錠剤の購入者構成比
救心および救心錠剤の購入者構成比

 ドラッグストアなどへの売り込みにもデータが役に立っているという。「新製品が若い層を狙ったと説明しても、ドラッグストアはなかなか棚を提供してくれない。データを基に説明すると、納得してくれるケースがある」(ヘルスケア情報企画部の杉田雅行部長)。

 ID-POSはあくまで購買者のデータであり、妻が代理で購買するケースが多いという。堀副社長は「薬の実際の使用者のデータを把握したい」と課題を語る。

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