牛の育成を支援するIoTサービスに、スタートアップだけでなく大手企業が続々と参入し、ここ1年間で導入が加速している。ソニーエンジニアリング(神奈川県藤沢市)が来年1月に新たなサービスを投入し、キヤノンマーケティングジャパン(MJ)はネットワークカメラを利用した監視サービスを開発中だ。

 牛の育成を支援するIoTサービスに、スタートアップだけでなく大手企業が続々と参入し、ここ1年間で導入が加速している。ソニーエンジニアリング(神奈川県藤沢市)が来年1月に新たなサービスを投入し、キヤノンマーケティングジャパン(MJ)はネットワークカメラを利用した監視サービスを開発中だ。

 和牛は1頭の価格が高価なため、分娩事故を防いだり、健康な状態でより重く「肥育」することで、畜産農家の収益改善に貢献するのが背景だ。

 ソニーエンジニアリングの「うしらせ」は牛の首にセンサーモジュールを装着し、一定時間起立していない状態が続くと、スマートフォンのアプリにアラートを送信する。太った牛は横になって自重で起き上がれなくなると、肺が圧迫されて窒息死してしまうことがあり、それを回避するためのサービスだ。

 一方のキヤノンMJはカメラの画像を人工知能(AI)で処理し、同様に起立困難の牛を検出するサービスを開発中だ。投入時期は未定だが、個体の行動把握などより広い分野への適用が見込まれる。模様に特徴があるホルスタイン牛の場合、高い確率で個体を判別できるという。

1年間で導入数が2倍以上に

 先行して進むのが繁殖分野である。リモート(大分県別府市)は、「牛温恵」と呼ぶIoTサービスを提供中だ。分娩が近い牛の膣内に通信機能付きの温度センサーを挿入。常に温度を監視して分娩の兆候が出た際に、携帯電話などにアラートを送信してくれる。牛舎に張り付くことなく、分娩時に子牛を圧死させてしまう事故を回避する。分娩時に約5%もの割合で事故で死亡するという。

 牛温恵はNTTドコモ、全国農業協同組合連合会(JA全農)との提携で、2016年から導入数が急増。2016年初頭に約600台の導入数が、2017年に倍以上に伸長。全国5000の繁殖農家(母牛30頭以上)のうち4分の1以上で使われるようになった。現在、2017年1月に向け子牛の健康を管理するサービスを開発中だ。

 ファームノート(北海道帯広市)は牛の発情を発見するサービス「Farmnote Color」を提供している。牛の首にセンサーを付けて、その動きをAIで学習し発情期を特定するというものだ。

 ファームノートには今年3月、JA全農などが合計5億円を出資した。牛の個体を管理するサービス「Farmnote」が牛の個体のデータベースと連携している点などを評価した。JA全農 畜産生産部の神谷誠治次長は「各種サービスと連携する牛の畜産・酪農のデータプラットフォームとして活用していきたい」と将来を展望する。既に1600農家の16万頭が利用している。

この記事をいいね!する