理化学研究所、大阪市立大学などはデータ活用で、体の疲れを回復しやすい抗疲労の日本食のメニューを開発した。疲労の指標が約2割改善するなど有意な結果が得られたため、給食サービスの事業者などにメニューの採用で交渉をしている。

 2017年5月末に開催した日本疲労学会総会・学術集会で疲労やストレスなどに対する結果を公表した。

鶏の胸肉を材料とした抗疲労食の例
鶏の胸肉を材料とした抗疲労食の例

 理研のライフサイエンス技術基盤研究センター生命機能動的イメージング部門のセンター長・部門長で、大阪市大の健康科学イノベーションセンターセンター所長の渡辺恭良氏は「疲労は人間の体の重要な細胞の部品がさび付いたり、壊れたりした状態である。さびを落としたり、部品の修復・交換が必要となる。生体の酸化、炎症、修復エネルギーの低下が3因子であり、それぞれを改善する要素を持つ食材を元にした日本食メニューの開発に至った」と説明する。

 具体的には、コエンザイムQ10、イミダゾールジペプチド、ビタミンB1、αーリポ酸、クエン酸などに上記因子を改善する効果があるとして、鶏胸肉やいわし、ブロッコリーやピーマン、海藻やヨーグルト、チーズなど成分を含む食材を活用したメニューを料理人の浦上浩氏などと約40種類開発した。

 効果をデータで実証するため、抗疲労食と効果のないコントロール食を、21~69歳の男女の2グループに対して与えて数値を計測。規定を順守した24人を解析の対象とした。前半の3週間はAグループに抗疲労食、一定期間おいた後半の3週間はBグループにといったように、自宅に料理を配達し、夕食として食べてもらった。当然、コントロール食かどうかは被験者には伝えていない。

実証実験の結果、抗疲労食により自覚的疲労感と交感神経活動の値が改善した
実証実験の結果、抗疲労食により自覚的疲労感と交感神経活動の値が改善した

 調査前後に心電図や脈波の測定、血液検査をして疲労度を算出した。例えば、自覚的疲労感と呼ぶ指標は、抗疲労日本食を採ったグループが18.1%改善した。

 このほか安静時交感神経活動と呼ぶストレスに関連する、交感神経活動の指標は、コントロール食を採ったグループが20.7%増加し悪化したのに対し、抗疲労日本食を採ったグループは微減となった。

 抗疲労日本食のメニューに関しては、渡辺氏、理研の健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム 融合研究推進グループ健康計測解析チームの水野敬チームリーダー、浦上氏らで開発し、大阪市大の健康科学イノベーションセンターを通じて特許を出願している。

レシピをライセンス供与

 渡辺教授は「疲労は脳が感じるもので、体の中のSOS信号である。抗疲労食メニューを幅広い事業者に利用してもらい、そうした状態を解消していきたい」としてレシピを外部の事業者などに一定のライセンス料で供与していく考えだ。現在、給食サービスの事業者などに対してメニューを提供する交渉をしているところだという。
 既に駅内コンビニの「アズナス」で抗疲労レシピの総菜を販売しており、阪神百貨店は地下食品売り場で抗疲労の弁当を販売した実績がある。

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