企業が学生に直接オファーを出せる新卒採用サイト「OfferBox」が急成長している。今年の利用者は約7万人になるもよう。昨年の約4万2000人から約1.6倍に増える。今年2月には機械学習アルゴリズムを刷新し、マッチング精度を約3割向上させた。
OfferBoxは、i-plug(大阪市淀川区)が2012年にサービスを開始した。学生はOfferBoxに登録する際、年齢・性別や大学名、所有資格、留学経験といった情報のほかに、「大手企業に行きたい」「やってみたい仕事」などの希望や、思い出の画像や研究スライドなど自分がアピールしたい情報も登録できる。企業の人事担当者は面接したい学生の条件を入力することで該当する学生がピックアップされる。企業は、その学生の登録情報を閲覧し、学生に選考段階へのオファーを出す。
優れた点の1つは、機械学習のアルゴリズムによって企業と学生の属性と行動データを学習していること。行動データは、企業がどんな属性の学生にオファーを送っているのか、一方でどんな学生がオファーを受けるのかといった情報だ。学生は就職したい企業が次々と変わっていくため、リアルタイムで継続的に学習しているという。
アルゴリズム内製化で大きな効果
2017年2月には機械学習アルゴリズムを既製ソフトから内製に変更した。これにより様々な変数を加えるなどのカスタマイズやチューニングが可能になった。特に昨年の企業の内定者データを取り込むことで、今年度のオファーのマッチング率は大幅に改善しているという。
既製の機械学習アルゴリズムでは、企業はピックアップされた学生のうち4人に1人にオファーを出していたが、今ではその割合は3人に1人に向上。企業にとってオファーの精度は約3割向上したといえる。
i-plugの中野智哉代表取締役社長は、「入社がゴールではない。3年後に入社した会社で活躍しているかどうかが重要だ。いかに自社により適した学生に効率良くたどり着けるか、そして面接やインターンシップなどに時間をかけて学生に会社を知ってもらうことが必要になる」と話す。
より適した学生にたどり着けるように、OfferBoxでは学生に適性検査を受けてもらっている。昨年9月には、イー・ファルコン(東京都中央区)の適性検査に切り替えた。
「251問(5択)の質問に答えて、194項目の結果が出る。イー・ファルコンの適性検査はより多様な側面を持っており、検査結果は大きく4つの階層Suitability(適性)、Capability(能力)、Personality(性格)、Fundamentality(基本性)に分かれている。ちなみに他社の適性検査結果は30~60項目と少ない」(中野代表)と言う。

OfferBoxで高い定着率を確保
国内最大規模のオフィス検索サイトを運営するオフィスナビ(大阪市)はOfferBoxを活用する1社だ。2014年入社の学生から導入して成果を上げている。2017年9月時点で、2014年卒2人と2015年卒4人の新人社員は1人も辞めていないほか、2016年卒入社組6人のうち1人が家庭の事情で退職しただけだ。
オフィスナビの人事を担当する大阪本社管理部の古川笙太氏はこう説明する。
「OfferBoxの利用によって、当社に合った学生を採用できている。企業から直接、学生に面接のオファーを送ることができるので、当社に相応しい学生を効率良く選択でき、面接や2日間のインターンシップによって学生に当社のことをよく知ってもらう機会を設けられる。だから、学生も自分に合った職場だと納得して入社している」
オフィスナビが扱うオフィス物件数は全国で3万件近い。第15期となる2017年6月期の売上高は5億7700万円。ここ数年増収が続いている。
2日間のインターンシップでは、実際に営業を体験する。オフィスナビの営業活動は、以下のようなものだ。顧客がオフィスナビのオフィス検索サイトで探し出した物件について、現地見学を同社に依頼する。すると、主に新人社員が中心になって顧客を現地に案内して、商談に入る。数件を紹介して、最終的に契約に至ると、1カ月分の賃料が手数料としてオフィスナビに入る仕組みだ。これを反響営業と呼ぶ。オフィスナビの営業の約8割が反響営業になっている。そのほかは、飛び込み営業やテレアポ(顧客に電話をかけて営業してアポイントメントを取る)などがある。
オフィスナビでは、約70人の社員全員にイー・ファルコンの適性検査を受けさせた。2018年卒の学生にオファーを出す際には、営業成績のいい社員と同じ適性を持った学生をピックアップした。
オフィスナビの金本修幸代表取締役は自ら、OfferBoxを使って学生にオファーを出している。適性検査の結果を基にOfferBoxの類似度検索を行って、類似度の高い学生を選んで「検討中」のボタンをクリックすると、その学生には「検討している」と伝わる仕組みになっている。学生が「会いたい」というボタンをクリックすると、オフィスナビに伝わり、その後検討したうえで学生にオファーを送るという流れになる。
2018年卒の学生については既に5人に内定を出し、いずれも承諾してもらっている。古川氏は「以前は他の新卒採用サイトなどと併用していたが、2017年からOfferBoxに1本化した」と話す。