今年中をメドに、クルマを運転している高齢者の見守りサービスがスタートする。加速度センサーやGPS(全地球測位システム)を内蔵しSIMを搭載した専用端末で運転状況をリアルタイムに把握できる。

 IoT機器の受託製造などを手掛けるベンチャーであるハタプロ(東京都港区)が、2016年中をめどに高齢者ドライバーを見守るサービスを、通信費込みで月額1000円以下で始める予定だ(初期費用は未定)。加速度センサーやGPS、スピーカーを内蔵するSIM搭載の専用IoT(Internet of Things)ゲートウェイ端末「flagle.io」をクルマに装着して使う。国内では初めてのサービスとみられる。

運転席のヘッドレストのシャフトに専用端末をはめて使用する
運転席のヘッドレストのシャフトに専用端末をはめて使用する

 急発進や急加速などの危険な運転を把握して、高齢者ドライバー1人ひとりの「ヒヤリハットマップ」を作成。マップを基に、そのドライバーに危険な場所に来たときにアラームを出すという。見守る側も専用アプリやパソコンで運転状態の確認ができる。

 一般に走行データを収集する方法はいくつかある。例えば、クルマの状態を自己診断するために使うインターフェースであるOBD2に端末を接続して走行データを収集する方法だ。また、運転手のスマートフォンの加速度センサーやGPSを利用する方法もある。flagle.ioは、OBD2に接続する必要がなく、あまりスマホを持たない高齢者でも気軽に利用できるように専用端末を開発した。

 昨年12月には、自動車買取・販売のIDOM(当時はガリバーインターナショナル)によるベンチャー企業との事業創造プログラム「Gulliver Accelerator」で、flagle.ioは最優秀賞に選出されている。アイデアの総数は約150だった。

 ハタプロの伊澤諒太・代表取締役CEOは「高齢者が引き起こす事故が増えており、2020年には国内ドライバー人口の約半分が高齢者になる『超高齢運転免許社会』になる」と、サービスを企画・開発した背景を語る。

 販路は複数の候補を検討している。大手通信会社が運営する通販サイトや、ガリバーなどの中古車販売店で販売する。また、カーナビメーカーとも交渉中という。

ドライブを支援する車載ロボット

 ハタプロは、flagle.ioをベースにした車載ロボットも開発している。発売は未定だが、10月に大手通信会社のサイトでコンセプトを発表する。

 9月には日本IBM主催の新規事業推進プログラム「IBM BlueHub Open Innovation Initiative for Automotive」に採択されており、12月の発表会に向けて日本IBMや通信会社、カーナビメーカー、損害保険会社など様々な企業と製品化へ向けて開発を進めている。

開発中の車載ロボットのCAD画像
開発中の車載ロボットのCAD画像

 この車載ロボットは、3つの特徴を持つ。まず車外にいる家族とつなぐ。例えば、ボイスメッセージ機能は、家族から受信したメッセージを音声で読み上げる。ドライバーは声で返事をすれば、音声認識によってテキストへ変換されて家族へ届く。

 2番目にドライブを楽しくする機能を備える。例えば、人の顔を認識して趣味嗜好を覚えて会話をする。位置に連動した情報も提供する。特に停車時や長距離運転時によく動き、話しかける。長距離運転時の会話は眠気の防止になる。また、運転傾向に合わせて車載ロボットが気持ちを体現する。例えば、通常の運転時はお腹の発光ダイオード(LED)が青色になり安心を表現するが、急発進・急停車など運転が荒いと判断した場合には、びっくりした様子を表現し、お腹のLEDの色や音声で注意をする。

 3番目はflagle.io同様の運転の見守りとなる。

深層学習の活用も視野に

 日本IBMの自動車業界向けIoTソリューション「Watson IoT for Automotive」を基盤技術に応用して開発する予定だ。「Watson」の自然言語、対話、音声認識・合成などのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の活用も検討している。

 伊澤CEOはさらに、深層学習(ディープラーニング)の活用も検討しており、こう語る。

 「深層学習の活用を前提に、ドライバーの登録情報(年齢や性別など)や会話情報などを取得する予定だ。主にドライバーとロボットのコミュニケーションの精度を高めるために利用する」。

 位置に応じてレコメンドしたスポットに対して、ポジティブに受け止めたかネガティブに受け止めたかなどのデータから、会話の内容などを変えていくとみられる。

 ロボットにはドライバーを認識するカメラも搭載。例えば、観光地などで1人ひとりのドライバーに合った情報(店舗や土産など)をピックアップして紹介してくれるようになるという。

 「海外では米ローカルモーターの自動運転車でWatsonを応用して人工知能がツアーガイドをする取り組みが進んでいる。弊社も自動運転時代を見据え、単なる運転見守りだけでなくアクティブシニア向けにパーソナルなツアーガイドができるロボットとして構想している」と伊澤CEOは説明する。

 2016年12月に開催されるIBM BlueHub Open Innovation Initiative for Automotiveの発表会で、深層学習の活用に関する詳細を明らかにするもようだ。

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