マツモトキヨシホールディングスが、顧客の購買、行動データ分析に基づく商品開発を深化させている。武田薬品工業と共同企画して、8月に発売した目薬「ファーストマイティアCL-G」の専用容量品は、コンタクトレンズ用目薬としては店舗売り上げトップ5に入り出足は好調だ。

 マツモトキヨシは現在、ポイントカードの累計発行枚数が2320万枚、LINE公式アカウントの友だち数が1370万人、スマホアプリのダウンロード数は400万件に達した。これらから集まるID付きのPOS(販売時点情報管理)データや、行動データを分析して、商品企画・開発や販売促進に効果を上げている。

 行動データとしては、アプリを起動した場所や閲覧する情報などが分析できる。アプリ画面の提示でポイントカード利用できるようにして、アプリとポイントカードのIDを紐づけているため、特定の商品を購買した人が、どんな情報を見ていたのかといったことが把握できる。LINEで発行したクーポンで、どんな層が購買まで結びついたかといったデータも手に入る。

同質化と極小商圏化が課題に

 食品や日用品を扱う、ドラッグストア、スーパーマーケット、コンビニエンスストアは真っ向から競合し、どこへ行っても同じ商品を買える「同質化」と、従来以上に狭い商圏で競い合う「狭小商圏化」が経営課題になっているという。

 「(マツモトキヨシでしか買えない)専売品を作ることは競合との差別化に必要になる」

 バイヤーである商品部医薬品課の岡田毅課長はこう語る。

 マツモトキヨシのプライベートブランドやナショナルブランドの専売品の商品は約2000アイテム(SKU)に達し、売上高の9%を占めるようになった。こうした商品はすべて購買データなどの分析に基づき、消費者ニーズを満たすように商品企画・開発を進めている。

 岡田課長が、「マイティア」シリーズの目薬で知られる武田薬品の担当者と商品企画の打ち合わせを重ねる中で注目したのは、高機能、高単価な目薬の好調さだ。

 目薬分野の商品販売データを、性別、年代別、価格帯別などの切り口で分析した結果、1つの傾向に気がついた。それは商品価格を200円台から100円刻みで分析すると、リピート率は低価格帯の商品では高いが、徐々に下がっていき、高価格帯の商品になると再び上がる「V字」の傾向があったのだ。

 マイティアの既存商品よりリピート率が高い価格帯で新商品を投入し、価格に見合った価値を訴求できればチャンスがあるのではないかと考えた。

発売早々売り上げ5位に入る

 とはいえ、目薬の成分まで変えた専売用品を開発するのは簡単ではない。一方で、専売品にはパッケージを変えるだけのものも少なくないが、それでは価格を高くできない。そこで従来品(9ml、615円)より大きな専用容量(15ml、880円)の商品を企画した。

 パッケージデザインも一新し、検討を開始してから1年半後となる今年8月に発売した。早々とコンタクト用目薬としては売り上げベスト5に入り出足は好調だ。今後は、狙い通りにリピート率が高いヒット商品にまで育つかが注目される。

価格帯別の目薬の商品数 (9月14日時点でマツモトキヨシオンラインストアで販売している商品180点を調査)
価格帯別の目薬の商品数 (9月14日時点でマツモトキヨシオンラインストアで販売している商品180点を調査)

 同社には、データ分析の専門チーム、メーカーと共同で商品開発を進める商品戦略室などもあるが、バイヤーである商品部でデータ分析を基に商品企画・開発を進めることもよくあるという。全社的なデータ活用体制が整っていると言える。

 同社はその秘訣を詳しくは明かさないが、社内で分析に関する知見の共有が進んでいるためだという。また、全社員が店舗での接客を経験しているため、ビジネス課題に基づく分析仮説の立案能力に優れているのも一因だろう。

 マツモトキヨシの顧客は若い女性も多く、今後、購買・行動データがさらに蓄積されていけば、分析力を武器とする有力企業の一社として注目が高まりそうだ。

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