損害保険ジャパン日本興亜は、人工知能(AI)を活用した音声認識システムを導入して、全国に約300カ所ある保険金センター拠点の品質向上と業務効率化に乗り出す。実証実験では、対応内容の記録を残す業務を約15%短縮できた。

 保険金センター拠点は、事故受付から保険金の支払いまでの顧客対応を行うサービス拠点。顧客が事故に遭った場合、まずコールセンターに連絡するが、その後の顧客対応は保険金センター拠点が引き継ぐ。

保険金サービス拠点のオペレーターがテキスト化された自身の対応内容をチェックするイメージ
保険金サービス拠点のオペレーターがテキスト化された自身の対応内容をチェックするイメージ

 2018年2月からすべての保険金センター拠点で働くオペレーター約1万人の顧客との通話を、深層学習(ディープラーニング)技術によってほぼリアルタイムに自動でテキスト化する。同社保険金サービス企画部保険金サービス革新グループの立元博史グループリーダーはAI音声認識システム導入の狙いについてこう話す。

 「これまでオペレーターの通話は記録していたが、テキスト化まではしてこなかった。だから自分の説明で気になる部分を探したり、対応内容を記録したりするのに時間がかかっていた。すべての通話がテキスト化されるので、キーワード検索が可能になる。だから気になる通話をすぐに聞くことができる」

 つまり、自分の通話だけでなく、顧客満足度の高い他のオペレーターの通話も手軽に参考にできるようになる。「ありがとう」や「感謝」、「助かりました」といった言葉で検索することで、顧客に感謝される説明にピンポイントでたどり着ける。それまでは「手当たり次第に聞いていたので時間がかかっていた」(立元グループリーダー)という。

オペレーターの認識率90%以上

 顧客満足度の高いオペレーターの対応法をきめ細かく学んだり、自分の顧客対応のポイントを効率的にチェックしたりできるようになることで、顧客対応の品質向上につながると期待している。

 2016年12月から3カ月間実施した実証実験では、対応内容の記録を残す業務が約15%短縮されたという。立元グループリーダーは「実証実験で『これは使える』と確認ができて、来年2月からの本格導入が決まった」と説明する。

 損保ジャパン日本興亜が導入するAI音声認識システムは、NTTグループのAI関連技術「corevo(コレボ)」を活用したNTTコミュニケーションズの「ForeSight Voice Mining」を採用。損害保険関連の用語を追加してカスタマイズして構築する。顧客との通話内容をリアルタイムかつ高精度で音声データ化したうえで、その音声データをテキスト化する。音声認識率は、オペレーターの場合に90%以上、顧客の場合に80%以上となる。

オペレーターと顧客の通話内容がテキスト化されていくイメージ画面 
オペレーターと顧客の通話内容がテキスト化されていくイメージ画面 

 次のステップとして、2社共同で自動要約機能の開発を目指す。さらに、蓄積されていくオペレーターの音声データを基に、深層学習技術を活用して顧客満足度の高い対応モデルを開発する。損保ジャパン日本興亜には、クレドマイスターという認定制度があり、数百人が認定されている。クレドマイスターの音声データは教師データとして使えるとみている。また、事故のアンケートはがきで「対応に満足した」というオペレーターの音声データも教師データの候補になる。