データ解析サービスなどを手がけるおたに(横浜市)は9月11日、オープンデータを活用した不動産価格の推定サービス「GEEO(ジーオ)」の有償版「GEEO Pro」の提供を開始した。予測精度と使い勝手を向上させ、不動産会社や投資家の利用を見込む。情報サイト運営のリブセンスやネクストも推定価格の情報提供を開始しており、不動産取引の“常識”が変わっていく可能性がある。

 GEEOは、知りたい物件の場所を指定したうえで、マンション・戸建て、間取りや構造、築年数などを設定すると、取引が成立すると推定される価格を表示する。今回投入するPro版では、「数理モデルを変えたことで、全体的な精度を表す指標は10%程度向上している」(小谷祐一郎代表)と言う。

おたにの「GEEO Pro」は全国の不動産物件の価格を推定する
おたにの「GEEO Pro」は全国の不動産物件の価格を推定する

 また、価格の時系列グラフ表示、予測対象物件周辺の売り出し物件リストの表示などの機能の追加によって使い勝手を向上させて、不動産売買の業務効率化を支援する。

 利用料金は1アカウントあたり月額5400円、年間契約は5万4000円。開始から1年間で1000件以上の契約を見込む。データを取り込んで独自のシステムを運用する企業向けのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)機能は別途提供する。

 GEEOの価格算出においては、国土交通省が定める不動産鑑定評価基準を基本とし、「独自に開発した空間的統計手法を用いている」(小谷氏)と説明する。不動産鑑定評価基準で示されている、物価、賃金、雇用及び企業活動の状態などの「一般的要因」、物件の都心との距離や交通の利便性などの「地域的要因」、そして物件の面積や築年数などの「個別的要因」を基にする。

リブセンスは部屋ごとに価格表示

 一般消費者向けの価格推定サービスも登場し始めた。リブセンスは2015年8月に不動産サービス「IESHIL(イエシル)」の試験提供を開始し、東京23区内のマンションの推定価格を公開している。マンションの部屋ごとの価格が分かるのが特長だ。

IESHILは部屋別の推定価格まで分かるのが特長
IESHILは部屋別の推定価格まで分かるのが特長

 ウェブ上から独自に集めた約3000万件にのぼる売買・賃貸履歴の情報を基に、物件の面積や築年数、最寄り駅や駅からの距離、周辺店の状況、犯罪傾向、開発計画、果ては駅のトイレ施設など約2万5000の変数を用いて分析し、取引価格を推測する。アルバイトや社員が現地調査をして、物件の確認、写真撮影などもしている。

 利便性を求めるのか、周辺環境を求めるのか、地域ごとに変数に対する重み付けは変わってくるという。また、実際の売買価格を調べ、特殊な条件で飛び抜けた取引実績が記録された物件は目でチェックして、価格を推定するモデルを修正している。1カ月ごとに推定価格は更新していく。今後、分析対象とする変数は約5万5000種類まで増やしていく方針だ。

 今後の課題は、情報収集の費用とそこから得られる収益のバランスだ。新規事業本部の芳賀一生氏は、「バブル期に販売されたマンションはネット上に売買情報がない。一方で東京23区外に出ると情報が少なく、また一戸建てが増えるが計算式はまだない」と語る。ただ、「(手間やコストがかかり)苦労しそうだが、情報入手の当てはついている。(不動産価格が分かるという)サービスの透明性、ユーザー満足度を重視して対応していきたい」としている。

 IESHILでは物件の推定価格の表示に加えて、物件に関する利便性・治安・地盤情報など8項目のレイティングデータ公開、さらに中古不動産物件の売買仲介サービスの提供を年内にも開始して収益化を図る。物件の推定価格の情報提供で中古不動産流通市場の透明化を進めて活性化につなげ、3年後に売上高50億円を目標としている。

 不動産情報サイト「HOME'S(ホームズ)」を運営するネクストも「HOME’S 不動産価格まるみえマップ(仮)」の提供を2015年10月に開始すると発表している。物件の価格データベースと価格の試算システムを独自開発し、地図上で物件の参考価格が一覧できる。当初は首都圏の中古マンションを対象とする。

 競合が相次ぎ登場するが、おたには、「多くが首都圏の中古マンションのみを対象としているのに対し、GEEOは全国の中古マンションに加えて、戸建て住宅も対象にしているのが強み」とする。無料のデータを収集、分析して価値を生み出して事業化できるかが注目される。

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