建機の先に取り付けて、建物の解体などに使う「油圧ブレーカー」の販売・保守を行う東空販売(福岡市)は、人工知能(AI)を活用することで、メンテナンス時期を検知したり、利用状況を把握したりする仕組みを開発している。今秋以降に社内だけでなく、顧客での試験利用も開始して、AIのモデルの精度を上げていく。
東空販売が建機部品「ブレーカー」をTO-MS(TOKU Management System)として、2018年には実用化する計画だ。油圧ブレーカーは様々なメーカーの多種多様な機種に装着して使われる。
東空販売営業本部本部長の柘植一慶専務執行役員は「機種ごとに異なるセンサー情報を扱うことになり、大量かつ多様なデータを処理するためにAIを活用する必要があった。建機本体ではなく、アタッチメントであるブレーカーのセンサー情報だけで様々な故障や状態を予知するため、ディープラーニング(深層学習)の活用が必要であった」と説明する。

想定外の破壊動作も検出
深層学習で見いだすのは、故障の予測だけではない。現場における異常な利用状態をセンサーの振動から検知することを目指している。
解体現場では、ブレーカーのチゼルと呼ぶ金属棒の先端を使ってコンクリートなどを破壊していく。このチゼルを破壊物に当てない「空打ち」をしたり、ブレーカーのボディを横から当てて対象物を破壊する行為が故障につながりやすい。このほかブレーカーのチューニングがあっていないといったことも検出する。
これらの状態をブレーカーを駆動する油圧の情報と振動センサーのデータを取得することでリアルタイムに判定。オペレーター以外に管理者や保守担当などにも情報を送る。
AIのノウハウと建機に搭載するIoTゲートウエイ機器、データを集約するクラウドサービスを安川情報システム(福岡県北九州市)、センサーのデバイス関連をスカイディスク(福岡市)が担当した。
深層学習は公開されているライブラリーを活用する。安川情報システム技術開発本部 AI開発部の小畑昌之部長は「精度を向上させるためには、学習だけでなく即時に処理するデータの前処理が欠かせない。例えば、センサーデータに表れる不要な高周波の成分を除去するなどしている」と説明する。現在、異常な状態のデータを学習している段階だ。例えば、実際に部品が摩耗したブレーカーのセンサーデータを機械学習し、故障に至るまでの状態を把握する。
TO-MSの導入によってビジネスモデルも変わる。ブレーカーの購入費は同等か多少上がるが、消耗品費や修理費、メンテナンス費のランニングコストを大幅に削減できるという。全体のコストで1割以上の削減を目指す。現在は購入から半年など経過期間の保証期間についても、稼働時間に変更することを検討している。
顧客からすれば建機とブレーカーの情報を一元管理したい。コマツとも建機管理サービス「KOMTRAX」とのデータ連携の交渉を始めたという。