新潟市、農業関連スタートアップのベジタリア(東京都渋谷区)と同社傘下のウォーターセル(新潟市)、NTTドコモなどは、同市で2015年からIoTを活用した農業の効率改善に取り組んでいる。2016年にはIoT活用の定量効果を把握し、今年はドローンを活用した分析を始めた。

 「農業ICT導入実証プロジェクト」は稲作農業生産者の水田に通信モジュールを搭載した水田センサーを設置。センサーはベジタリアの関連会社のイーラボ・エクスペリエンスが開発したもので、湿度・温度・水位・水温等を自動で計測。スマートフォンのアプリなどで情報を取得できる。

 まず2015年度に22の圃場に300台のセンサーを置いて実験を始めた。新潟市農林水産部ニューフードバレー特区課の小出隆嗣係長は「9割以上が使い勝手がいい、全体の8割以上が精度もいいと評価した」と説明する。

水田に通信モジュールを搭載した水田センサーを設置
水田に通信モジュールを搭載した水田センサーを設置

 2016年度は定量的な評価に取り組んだ。大小の4農家で151台のセンサーを設置したところ、水田の水回りの確認にかかる時間が平均で43%、最大で76%それぞれ削減された。

状況を把握できるアプリ
状況を把握できるアプリ

 実験に参加する農業法人の米八(新潟市)の加藤誉士寛代表取締役は「水位などのデータを見ながらどの水田を優先的に回るのかを判断できる。以前はあった計測誤差もなくなっている」と評価する。

 今後、データを基にした高品質米の育成にも取り組む。累積の平均温度を参考に収穫することなどで、品質を向上させることができる。

 今年6~8月には今回の枠組みの一環で、米八の圃場において、自律制御システム研究所(ACSL、千葉市)のドローンを利用した、高解像度カメラの空撮による育成状況の把握にも取り組んでいる。

 NTTドコモが画像データを分析。ベジタリアが植物医師などによる画像診断や分析データの評価を実施し、生育状況の把握や収穫時期の予測、病害虫や雑草の発生状況の把握などに取り組む。具体的には空撮画像を植物の量や活力を示す指標として数値化し評価を進めている。

農作業の内容を自動記録

 ウォーターセルは農家や農業法人がデータを基にした農業を営む支援サービス「アグリノート」を提供している。水田センサーの情報を連携できるほか、作業内容を自動で記録できる機能をこのほど追加した。

 アプリを起動した状態で水田に向かった際に、GPS(全地球測位システム)で圃場などの場所を把握し、前年のデータなどから実施した作業を推測して入力してくれる

ウォーターセルの「アグリノート」で作業を記録しているところ
ウォーターセルの「アグリノート」で作業を記録しているところ
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 新潟市では年々、個人も含めた農業を手掛ける経営体の数が減る一方で、それを引き継ぐなどで経営体当たりの耕地の面積が増えている。結果として、耕地は分散し、行政区域をまたぐこともある。水田センサーなどIoTはこうした課題の解決、さらに高品質米の生産にもつながる。これらは新潟だけでなく日本全国の課題でもある。