日立造船は全社のビッグデータ、人工知能(AI)、IoT活用の環境整備へ積極投資をしている。来年3月に、様々な事業で活用できる全社IoT基盤を構築し、同年8月には新たな遠隔監視・支援センターを開設して面積を10倍に広げる。

 日立造船はこれまでも、事業ごとにビッグデータ、AI、IoT活用に取り組んできた。例えばゴミ焼却発電プラントでは、炎の画像認識によりゴミ処理施設の燃焼効率を上げる取り組みをしてきた。

 こうした知見を他の事業でも活用できるようにするのが、データ収集、蓄積、分析、可視化の仕組みを共通化する全社IoT基盤だ。

 同社のコア事業である水処理施設、橋梁や水門などの水関連事業、そしてゴミ焼却発電プラント、舶用エンジン、風力発電などのエネルギー関連事業から集まる稼働状況、機器センサー、画像・音声データ、トラブルや対応履歴などのデータを収集、蓄積、さらに分析、見える化する基盤となる。自社の生産工場からもデータを収集していく。

 「データ収集基盤、端末を共通化し、プロトコルもMQTT、JSON形式というデータ収集に特化したものに統一していく。そうすると蓄積するシステム、インターフェースも共通にでき、メンテナンスもやりやすくなる」とICT推進本部ICT事業推進部長の林稔氏は説明する。

日立造船は全社IoT基盤を構築し、様々な事業や自社の生産現場の改善などに生かしていく
日立造船は全社IoT基盤を構築し、様々な事業や自社の生産現場の改善などに生かしていく

プロトタイプ開発期間を半減

 事業推進のスピードアップの効果も期待できる。「顧客の要望に対して、遠隔監視のプロトタイプをすぐに作り上げるようなことを目指したい」(常務執行役員ICT推進本部本部長の島崎雅徳氏)。「半年ぐらいかかっていたものを2~3カ月に上げられるのではないか」(林氏)と期待する。IoT基盤の構築後、順次、各事業との連携を進めていく。

 同基盤で収集したデータは遠隔監視・支援センターで生かしていく。現在は顧客に納めた23のゴミ焼却施設や32の発電施設の共同の監視・運用業務として、予防保全に関する運転データベース構築、維持、管理や分析、24時間監視業務などに活用している。

 全社IoT基盤の構築により、すべてのコア事業と自社生産現場からも設備のIoTデータを収集し、設備の安全運転・運用性向上を図っていく。

 現在は本社内にあるセンターを本社脇に新設する建物に移管し、面積は10倍の規模に拡張。監視対象を様々な事業に広げるだけでなく、「IoT、ビッグデータ、AIの開発拠点や、オープンな共創の場としても視野に入れた環境を整えていきたい」(島崎常務執行役員)と言う。

過去10年以上のデータを活用

 こうしたIoT基盤の構築は多くの企業が進めているが、日立造船の強みはどこになるのか。

 林氏は「ゴミ焼却については10年以上前からデータの収集、蓄積をしてきたのが大きい。過去のデータも含めてAIやビッグデータによる高度化ができる」と説明する。ゴミ焼却設備には、ゴミの量、ベルトコンベアの速度、熱量、水蒸気発生量など100近いセンサーがあり、それらのビッグデータを分析して、発電量を最大化するための取り組みを続けてきた。

 「火力発電はインプットとアウトプットが一定でシンプル。しかし、ゴミ焼却発電においてはインプットとなるゴミの量や質はファジーで状況に応じて異なる一方で、アウトプットとなる発電量は安定した出力が求められる。ここの最適化がAIの出番となる」と島崎常務執行役員は説明し、こうした高度なノウハウを他事業でも生かしていく方針だ。

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