第一生命保険は10月、約6万人の従業員(健康保険組合員)を対象としたヘルスケアポイント制度を始める。運動と健康状況に関するビッグデータを自ら収集、分析して、新たな保険商品の開発に役立てる考え。同社は1月、保険とテクノロジーが融合した「InsTech(インステック)」の推進を戦略課題として掲げ、協業や投資などの活動を一気に加速させている。

 ヘルスケアポイント制度は、希望者へウエアラブル端末(TDK製)を配布して歩数と睡眠状況を記録。アプリに体重などと併せて記録してポイントを蓄積してもらう。ポイント数に応じてQUOカードなどと交換できるようにする。記録にはイーウェル(東京都千代田区)の企業向け健康支援サービス「KENPOS」のアプリを利用する。

 ウエアラブル端末の配布数は限定するが、これほど大規模な健康促進サービスは珍しい。

保険会社の「データ空白期間」

 「ヘルスログ、健診データ、レセプトデータと合わせたデータは外部にはない。自社で集めるしかない」

 グループ経営本部兼営業企画部の北堀貴子部長はこう語る。生命保険会社はもともと多くの顧客に関するデータを持っている。加入時には健康診断の結果や過去の病歴を申告してもらう。入院、手術となると詳しい診断書を提出してもらう。しかし、加入者が健康な間は接点がなく、ちょっとした通院のレセプトや健康診断の結果データは手に入らない。

 欧米の保険会社は、日本における健康保険組合のように治療費を払う仕組みであるため、レセプトデータも保有する。

 保険業界全体として、個々人の健康状態に応じた保険料率を設定したり、健康増進を支援したりする商品の開発が進んでいる。個別対応の実現には、健康である間のデータも分析して健康でいられる人、病気になる人の傾向を理解できた方がいい。そのデータ収集・分析への第一歩が、従業員を対象にした健康支援プログラムなのだ。多くの従業が継続すれば、空白の期間を埋める貴重なデータが蓄積されていく。

InsTechの3分野

 同社のInsTechでは、個別の保険料率を定めたり、本プログラムのように加入者の健康をサポートをしたりする「ヘルスケア」、保険の引受査定基準の見直しを探る「アンダーライティング」、タイムリーな営業提案を実現する「マーケティング」の3分野について、テクノロジーによる高度化を目指す。

 ヘルスケア分野ではこのほかにも、京都大学を中心とした産学協同研究への参加を7月に発表。個人の健康・医療・介護(パーソナルヘルスレコード=PHR)データを活用した健康寿命の延伸に寄与するビジネスモデルの創出を目指す。同月には慶應イノベーション・イニシアティブが組成するベンチャーファンドへの出資を発表するなど、社外との連携を積極的に打ち出している。

 InsTechの活動は2020年を一つの目標として進めている。2018年には、医療機関から医療情報データを集め、統計処理や匿名化などを施した上で第三者に提供する「代理機関」制度が始まる可能性がある。PHRデータが入手しやすくなると、InsTechの活動は一層促進される。

 営業企画部が事務局の役割を果たす「InsTech イノベーションチーム」には営業、商品、システムなど約15部門の約30人が参加するが、来年度には組織増強も検討している。人工知能(AI)による事務処理業務の効率化など、新たな領域にもチャレンジしていく方針だ。

第一生命保険が進めるInsTechの取り組み内容
第一生命保険が進めるInsTechの取り組み内容
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