日本瓦斯(ニチガス)はビッグデータ活用のスタートアップと連携し、新事業領域における競争力の強化に動いている。人工知能(AI)を活用したマーケティングサービスに強みを持つメタップスに出資。強固な関係を築き、ビッグデータを活用する新たな顧客サービスや経営向けシステムを短期間に投入している。

 ニチガスは家庭向けガス事業の自由化に伴い今年4月に市場に参入し、6月末までの3カ月間で4万2000件以上の新規顧客を獲得している。メタップスと連携して開発する新サービスがこの成長を支えている。

 メタップスとは昨年4月からプロジェクトを開始し、2~3人のエンジニアが常駐し開発を進めている。同年9月には業務資本提携を結び、11月にはニチガスが新設した基幹業務のクラウドサービスを運営する子会社への出資をメタップスにも仰いだ。

 メタップスは2015年8月の上場以来赤字が続き、2016年9~11月期に初めて単月の黒字となった。赤字続きの中での出資だったが、ニチガスのITやデジタル戦略を担当する柏谷邦彦常務取締役は「開発スピードとビッグデータを扱うスキルを評価しており、数カ月一緒に取り組んで大丈夫と判断した。連携をさらに深め、中長期的なイノベーションも実現していきたい」と説明する。

 ニチガスが期待するのは、データを活用するサービスの迅速な投入と検証だ。「通常は1~2年かけて開発していたが、1~2カ月でリリースしている。短期で投入し、中止の判断も容易にできる」(柏谷常務取締役)。

 こうして、LINEのチャットボットを利用したガスの新規申し込み受付や器具の販売、効率的な工事予約システムなどのサービスを次々と開発し投入していった。

適切な工事担当を割り出して提示

 例えば5月に投入した工事予約システムは、工事を担当する協力会社の担当者のスケジュールだけでなく、スキルのデータも登録。前後の工事場所との移動距離も考慮して、アサイン可能な担当者のみを提示することにした。工事後には顧客に品質を評価してもらい、担当者をアサインする際の参考にしている。

 現在、開発を進めているのが、経営向けのダッシュボードだ。例えば、ある支店の売り上げが昨年や他の支店を大きく上回ってる場合、その理由を知るためドリルダウンしていくと、ガス機器や新規の都市ガス加入が影響していたといったことが分かるようになった。現在は月次だが今後は日次でデータを取り込む。将来的に、AIが過去のデータと比較分析し、アラートを出す機能を実装する。

 一方で6月には、「AIによる音声認識のコールセンターで高い技術を持っている」として、音声による顧客対応でU-NEXTと組んで開発を進めることを発表した。

 ニチガスは家庭向け市場に参入し、法人向けとは桁違いに多いそれぞれの顧客への対応が喫緊の課題となった。出資関係にこだわらず、AIやビッグデータのソリューションを適材適所で選んで活用する。大企業のスタートアップ活用で参考にすべき点と言えるだろう。

ニチガスはスタートアップと組んだり、他社と共同出資をしたりして、データやAI活用を加速する
ニチガスはスタートアップと組んだり、他社と共同出資をしたりして、データやAI活用を加速する
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