ソフトバンクは6月1日付でビッグデータ活用の専門部署を設置してグループ内外のデータ分析に乗り出した。現在約10 人のデータサイエンティストを配置しているが、2〜3年で100人規模まで拡充していく考えだ。まずは今後1年で倍増を目指す。

 技術統括と呼ぶ組織にビッグデータ戦略本部を置いて、グループのデータ分析会社Agoop(東京都港区)の柴山和久社長を責任者である、本部長代行に任命した。同本部は約100人の陣容でデータサイエンティストのほかシステムやデータベースの担当者が在籍している。

 ビッグデータ戦略本部のミッションはグループ内外のデータ関連部署や会社の持つデータを把握すること。Agoopの人流、IoT(Internet of Things) などのセンサー、顧客行動などのデータを集約して管理、活用していく。

 そうしたデータを顧客企業の持つデータと掛け合わせて分析するサービスを2015年秋にも始める計画だ。位置情報や顧客の購買情報などを活用する、「流通業や交通、自動販売機など向けを中心に提案していく」(柴山本部長代行)。当初はマーケティング用途向けが中心で、製造業の生産業務向けなどは提供しない。

ソフトバンクはデータを活用したビジネスを統括する「ビッグデータ戦略本部」を立ち上げた

 Agoopはラーメン店を検索するアプリ「ラーメンチェッカー」などを提供し、GPS(全地球測位システム)で位置情報も取得する。ソフトバンクだけでなくNTTドコモ、KDDI(au)の3キャリアで、データは1日約8000万件に及び、許諾を得たユーザーの位置情報から人流データを生成している。

 データは、一定のメッシュごとに集計したものと、人の固まりを点としてプロットした「ポイント型」の2 種類を用意。商業地域のポイント型は1秒単位、メッシュ型は1時間単位のデータを提供する。時間帯別や顧客の居住地域といった実際の情報を基に、商圏分析を行うことができる。

 Agoopの人流データの提供価格は全国分のデータで年間2000万〜3000万円。特定の市など一部エリアに限定する場合は月間100万円程度である。

 Agoopは国が自治体や住民向けにサービスを始めた地域経済分析システム(RESAS)に、人流のデータを無償で提供している。自治体や企業が有償の詳細分析を依頼したり、データを購入したりすることを狙う。

2000億件のレコードを分析

 人流データは2014年に提供を始めて、約20の企業・団体が採用している。2014年度は売上高3億円規模の事業だったが、2015年度は倍増となる見通しだ。

 Agoopのアプリは通話のつながりやすさをチェックするために使われていた。接続しづらい場所を見つけ出し、基地局増設のプランを検討するというものだ。

 ログ情報にユーザーなどから寄せられるクレーム、基地局や建物の情報など2000億件のレコードを分析することで情報の確度を高めている。どのようなジャンルの店であるのか、何階にあるのかといった情報まで、実際に担当者が現地に出向いて確認したうえでデータ化している。

 そうした情報に人流データを掛け合わせることで、なぜそのような人の動きが生じているのかまで的確に把握できるという。

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