自動車向けの部品などを製造する化学メーカーのダイセルは、映像と人工知能(AI)を活用した生産の効率化に取り組んでいる。作業者のカメラ映像を認識して、異常な動きをリアルタイムに検知したり、後から状況を参照したりできるようにした。自動車部品は共通化が急速に進む。1つの不具合の影響範囲が広くなるリスクを引き下げたい考えだ。

 エアバッグの基幹を成す火薬部品を製造する播磨工場(兵庫県たつの市)で2015年初頭から試験的に導入し、今年春までに検出精度などで一定の成果が見られたと判断。アジアを中心とした他の地域の工場への展開に乗り出す。

 導入した映像カメラは4つだ。作業員の手を中心とした動作を把握する「行動カメラ」、360度で撮影して人の動きを記録する「全方向カメラ」、特定の場所を狙って撮影する「パンカメラ」、設備の稼働状況を撮影する「設備カメラ」である。

 行動カメラはゲームなどで使うセンサーを応用しており、作業員の体の軸を検出する。あらかじめ正常な作業員の動きの軸のデータを機械学習させており、それと比べて大きな違いがあるものを「異常」と判断して、警告を出す。監督者はスマートウオッチを装着しており、即座に振動とテキスト表示で警告が届く。

 仮にしゃがんだ動作が検出されれば、部品を落としたことを推測できる。落としたものを製造ラインに戻すのは違反であり、そうした例外的な動きを検知する。後から問題を把握した際にも、状況を検証できる。

AIを活用した映像データによる異常検出方法
AIを活用した映像データによる異常検出方法

作業者にも受け入れられる

 “監視”に対する抵抗感はないようだ。ダイセルの生産技術本部生産技術センターの岡田一宣組立加工技術革新グループリーダーは「これまでは監督者が近くでチェックしていたが、そうしたプレッシャーがない。作業者本人にとっても、システムで常にチェックしてもらえるという安心感がある」と狙いを説明する。

 全方向カメラでは作業員の水平方向の動きをベクトルで検出し、異常な動きを検知したり、改善に活用したりする。製造装置や部品なども監視する。材料投入口などの映像を分析し、正しい位置に置かれているのか、部品の締め付けが適切かといったことを判断している。

 仮に問題が起こっても影響範囲を抑えられる。これまでは問題が生じたら、原因が分からない限りそのロット全体を廃棄する必要があった。これに対して、作業ログが精緻に残されていれば、不良の理由とその影響範囲が明確になり、その範囲だけ破棄すれば済む場合もある。

 今回の仕組みは日立製作所と共同で開発しており、ソリューションとして日立が外販する。ダイセルの今回の投資額は実験的な要素もあり非公表。今後、深層学習を導入し、より細かな指や視線などの動きの把握に取り組む考えだ。

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