大和ハウス工業子会社で、オフィスや商業施設の設計などを手掛けるデザインアーク(大阪市西区)は7月、amidus(東京都港区)に出資した。出資比率は30%となる。amidusはデザイン家電などを手掛けるamadana(東京都渋谷区)の子会社で、クリエイティブソリューション部門が独立する形で設立された。

 amidusは現在、クリエイターや一般の生活者をネットワーク化して、彼らから生み出されるアイデアと企業をマッチングさせる事業を展開している。デザインアークは以前からamidusと共同で、ネット接続家電などを設置しやすい棚「Transight」の開発を手掛けてきた。Transightは棚自体が通電、及び無線LANなどのインターネット接続の機能を有する。ネット接続家電など、いわゆるIoT(Internet of Things)機器を設置しやすいという。

 出資を機にさらに連携を密にして、TransightにIoT機器を組み合わせたソリューションの開発、提供を狙う。年内にTransightの量産体制を築き、商業施設やオフィスなどへの導入を目指す。

 デザインアークの山崎洋一経営企画部長は、IoTに着目した理由をこう説明する。

 「家は時間の経過とともに(老朽化が進み)価値が下がるのが一般的だ。価値が0になるまでの期間を最大化する。あるいは、使えば使うほど価値が上がる。大和ハウスグループではそんな家を目指している。IoT機器をうまく取り入れることで、データや機器と連動したソフトによって、価値を向上させることも可能になるだろう」

 ただ、商業施設やオフィスでIoT機器が一般的に利用されるまでは時間がかかりそうだ。今回の出資は、IoTが普及した時代に向けてノウハウを習得するための投資の意味合いが強いだろう。

Transightで店内の行動ログを取得

 投資の背景には、大手企業ならではの課題がある。

 「大企業になるほど、小さなスタートラインが見えなくなる。新たな可能性があっても、それをすべての住宅に対応させる、すべての生活のスタンダードにするという話に膨らんでしまい、実現に至りにくい」(山崎氏)。そこで、より小回りの利くデザインアークを中心に、新たな領域での事業化や、住宅への採用を含めた可能性を探り始めている。

店舗でのTransight設置イメージ
店舗でのTransight設置イメージ

 デザインアークはこれまで設計を手掛けてきた、商業施設やオフィスなどにTransightの導入を促すことから始める。商業施設においては、「店舗内で顧客がどういう行動をとっているか把握したいというニーズも高い」(山崎氏)。そこで、Transightを活用して、店舗内の行動をデータとして取得して、蓄積できる仕組みの開発も目指す。

 また、他の企業と、Transightを活用した新たな製品の開発の商談も始まっている。「既に、アイデアベースでは具体的な相談も寄せられている」(山崎氏)。例えば、こんなアイデアだ。Transightを活用して、介護施設向けの棚を作り、タッチパネル式の液晶にして、半分は家族が送った写真を表示する。もう半分はネットと接続された仏壇にする。それぞれにはセンサーがついていて、毎日データを取得。例えば仏壇にお線香をあげないなど行動が普段と異なる場合に、家族にアラートが飛ぶといった具合だ。

 今後もamidusを通じてクリエイターや生活者から、様々なTransightの利用アイデアを募り、活用の可能性を探る。

この記事をいいね!する