野村証券は7月19日、深層学習(ディープラーニング)などの人工知能(AI)とビッグデータを用いた投資情報を提供するサイト「aiQ-Index」を公開し、新サービスの予告を掲載した。第1弾として、2017年内にSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)分析を用いて、投資の意思決定を支援する情報の提供を目指す。衛星画像、IoT、POSデータなど活用データも拡大していく方針だ。

 ヘッジファンドなどの膨大な資金を投じる機関投資家の間では、ビッグデータとAIを活用した投資が進んでいる。例えば、衛星画像を用いて石油タンクに残る石油量をAIで推測したり、トウモロコシ畑の状況から収穫量をAI予測したりして、投資判断の材料にしているという。

 野村証券クオンツ・ソリューション・リサーチ部AI・ソリューション・リサーチ・グループの山本裕樹グループリーダーはaiQ-Index開設の背景について、「SNS、衛星画像、POSなどビッグデータに基づく投資情報が有効だと認識され始めているが、個人投資家が自分でビッグデータやAIを使った分析するのは難しい。我々がビッグデータ投資情報を低コストで広めて、市場の透明性、効率性の向上に寄与したい」と語る。

 まずは年内を目標に、SNSの投稿データを分析した情報サービスを提供する方針だ。SNS 上の個別銘柄のセンチメントを指数化し、リアルタイムで表示する。SNS上でどんなトピックで書き込みがされていて、それらがポジティブかネガティブか分析でき、投資の意思決定に役立ててもらうイメージだ。

 投資の際に著名金融トレーダーのTwitter投稿を参考にする投資家もいるが、1つひとつ読んでいくのは時間がかかる。投稿をビジュアル化して即座に理解できるようにしていく。

SNS分析サービスの画面イメージ(aiQ-Indexのサイトより)
SNS分析サービスの画面イメージ(aiQ-Indexのサイトより)

 SNS分析を皮切りに衛星画像、IoT、POSデータと情報源の拡大を準備している。aiQ-Index公開を機に、データ提供パートナーを募る。

東大松尾研と連携

 aiQ-Indexは昨年10月、野村証券社内のイノベーションコンテストで、山本氏らの企画が最優秀賞を受賞したのを契機に、今年1月にプロジェクトチームが立ち上がり、今月のサイト開設に至った。

 山本氏は2014年から、AI研究で知られる東京大学松尾研究室(東京大学大学院松尾豊特任准教授)に社会人ドクターとして参加し、金融におけるAIの応用の研究を進めている。コンテストには松尾研のメンバーも参加し、AIの開発、ビジネスプランなど初期の段階から協力を受けてきた。

 松尾特任准教授の助言も得て、Twitter投稿のポジネガ(センチメント)分析をするAIでは、独自性の高い技術の開発を進めている。官公庁の出す文書から商品や飲食店のレビューなど様々なテキストを学習させて、多様なテキストのポジネガを判定可能にしている。

 また、テキストの解釈を単語単位でなく、人間と同様に文字レベルで解釈するようにしている。こうした工夫で、例えばSNSなどで書かれる「情弱」がどんな意味合いかを初めて見ても理解できるようにするという。未知のデータへの対応力が高い汎化性能の高いこのAIをSNS分析サービスで活用していく。

景況感を先読みする指標を開発

 aiQ-Indexでサイト開設と同じ7月19日、経済産業省が開設したサイト「BigData-STATS」で、「SNS×AI 景況感指数」と「SNS×AI 鉱工業生産予測指数」などの指標の試験公開を始めた。この2指標は経産省によるビッグデータを活用した新指標開発事業の一環として、野村証券が開発したもの。

 景況感指数の算出にはまず、景気に関してあらかじめ設定した約50のキーワードを含む1日100万件程度のTwitterからツイートを抽出。そのツイートから深層学習によるAIを用いて、本当に景気に関して言及している1日500件程度のツイートを抽出する。

 次のステップで景気に対してポジティブな内容かネガティブな内容かをAIで判別して指数を算出している。

 AIは、経産省の「中小企業景況調査」と内閣府「景気ウォッチャー調査」に寄せられたコメントを教師データとしてそれぞれ学習させて作成した。例えば「最近は客の反応も非常に良いため、先行きはやや良くなる」は良いコメントと判断するようになる。

 学習の結果、景気ウォッチャー調査のデータで学んだAIでは90%以上の精度で、景気ウォッチャー調査で書かれたコメントがポジティブかネガティブかの判断が可能になった。

 同AIを使ったSNS×AI 景況感指数は、内閣府「景気ウォッチャーDI」との相関係数0.79と高い連動性を示した。週次で更新するSNS×AI 景況感指数は、内閣府が毎月10日までに発表する指標より1カ月前後早く公表されるため、景況感をいち早く知ることに活用できる。

 aiQ-Indexのサイトでは、この指標が上下した要因を読み解けるよう詳細データを提供し、指標の定着を目指す。2018年4月以降は、aiQ-Index上で更新していく。

 サイトを運営する野村証券の金融工学研究センターは、野村証券のリサーチ部門。45人のクオンツアナリスト、25人のシステムエンジニアが在籍。各種投資のベンチマークとなるインデックスを計算し、提供するなど同社のリサーチ部門の役割を果たしている。

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