パルコは活用するデータ種類を広げて、マーケティングのデータ分析を深化させている。従来のスマートフォンアプリに加えて、昨年末には店頭のカメラ画像を活用して店内の顧客行動を可視化する実証実験を実施。さらに、今年4月には独自の気象データを活用した来店者数予測の施策に乗り出した。
パルコは2014年10月より専用のスマートフォンアプリ「POCKET PARCO」を配信し、来店前から来店中、来店後までの状況に合わせたマーケティング施策を実施することで、潜在顧客の嗜好性や購買行動を把握。アプリの閲覧履歴などから、個々のユーザーにパーソナライズした情報を提供して来店頻度の向上を図ったり、購買直後の顧客にメッセージを送信して買い回りを促進したり、サービスの満足度評価をしてもらうことで、接客/サービスの改善に役立てたりしている。
さらに2015年からは来店中の顧客行動をリアルタイムで可視化すべく、IoT(Internet of Things)を活用した取り組みを始めた。その理由について同社は、「来店前と来店後の顧客行動データは、POCKET PARCOの利用履歴からある程度取得できているが、来店中の行動データは取得できていなかった」と説明する。
具体的には2015年12月10日から27日まで、渋谷のパルコミュージアムで開催した「奇譚クラブ 10周年展」で、画像認識カメラを使って来店時の顧客行動を分析・可視化する実証実験を行った。入り口付近に設置した画像認識カメラで来場者の顔写真を撮影し、年齢・性別といった属性を推定。分析結果をパブリッククラウド「AWS(Amazon Web Services)」に格納して、リアルタイムで可視化した。なお、実験で撮影した元画像データの分析は端末パソコンで行い、元画像データ自体はすべて消去している。
実験の結果、「コアな来場者は30代男性」「来場者がもっとも多かった時間帯は午前11時から午前12時」といった分析結果を得た。同社では「これまでの体制では計測不能だった客層分析・可視化を自動化できた」としている。
屋上の降雨センサーで来店者数を予測
また、2016年4月13日から池袋パルコの屋上に自作の「気温・降雨検知センサー」を設置し、気温・降雨データから来店者数を予測する取り組みも始めた。
同センサーはシングルボードコンピュータの「Raspberry Pi」を基盤としている。センサーへの水滴の付着で雨の降り始めを検知し、降雨状況はセンサー基盤の水滴が乾いたかどうかで判断する。雨を検知すると、担当者にメールで通知される仕組みだ。
同センサーから得られたデータと購買データをかけ合わせて分析したところ、「雨天時は、高単価商品の売り上げは減少するが、雑貨などの売り上げは増加し、飲食比率は高くなる」という結果を得た。センサーを活用したピンポイントかつリアルタイムの天候分析で、来店者数の予測精度が向上した。同データを顧客の位置データと組み合わせれば、将来的にPOCKET PARCOで「雨天時には近隣にいる人に来店を促す飲食店のクーポンを発行する」といった売り上げ促進施策を打てる。
パルコでは今後のIoT活用について、「来店しても購買に至らなかった要因を、店舗内での行動データ分析から導き出し、購買促進施策につなげたい」と語る。
