クルマのIoT(Internet of Things)データを活用したサービスを開発するスマートドライブ(東京都品川区)は8月、法人向けにクルマの管理サービスの提供を開始する。運送事業のセイノーホールディングス子会社が今年3月から先行して活用。安全運転の意識が高まってきたという手応えをつかんでいる。
「トライアルの段階だが、安全運転の意識が高まってきたのではないか。本部の人間がリアルタイムで走行データを見ることができ、ドライバーも見られているという状態になるので、丁寧に運転するようになった。その結果、小さな事故も起きていない。今後は、走行データを基に同じ所をぐるぐる回らず配送できるようにしたい。8時間かかっていた配送を6時間に短縮できるのではないか」
こう話すのは、セイノーホールディングスの子会社であるココネット(東京都中央区)経営企画部の伊藤宏樹シニアマネージャー。ココネットは全国に約260台の軽自動車を所有して、スーパーやコンビニエンスストアなどで食料品を買い物した顧客宅への当日配送などを事業として手掛ける。今年3月から都内で走る約20台の軽自動車を対象に、スマートドライブのリアルタイム運行管理サービス「DriveOps」を先行活用して、安全運転の推進などに取り組んでいる。
スマートドライブはココネットからサービスの使い勝手や要望などを定期的に聞いて、2週間おきにサービスのメニューを増やしてきた。例えば、7月には運転の診断サービスを提供するようになった。クルマの状態を自己診断するために使うインターフェースであるOBD2に端末を接続して収集する走行データのうち、急加速、急減速、速度超過、アイドリングの4つを診断項目に使っている。8月の正式リリースでは、急旋回やエンジンブレーキなどのデータも診断項目に加えるという。
DriveOpsの料金は、車1台当たり月額1480円からで、安全運転診断付きのサービスになると1台当たり月額1980円の予定。初期費用は1台当たり3980円(シガーソケット版)、または8800円(OBD版)で、一般に使われているデジタルタコメーターなどと比べて約20分の1で済む。複数台数の利用による割引もある。OBD2端末を設置するだけですぐに始められるクラウド型サービスだ。
ちなみにOBD2からは、速度やエンジン回転数、スロットルの開度、水温や電圧、燃料の残量といった車の“生データ”も取得できる。
「それぞれの診断項目のしきい値については公表していないが、業種によって違う。顧客から話を聞いてしきい値を決めている」とスマートドライブの北川烈代表取締役CEO(最高経営責任者)は話す。DriveOpsのダッシュボード画面(下の写真)で、急加速や急減速といったデータはリアルタイムで表示でき、全車両を一元的に見られる。ドライバーはスマホのアプリで自分の走行データを確認できる。

診断項目を基にしたドライバーのランキングシステムも年内にリリースする計画だ。「この人、運転がうまいよね」といわれるドライバーが、実際にどういう運転をしているのか、データに基づいて把握できる。
データ解析でクルマの効率運用
スマートドライブの新サービスは、クルマの効率運用にも生かせる。日本駐車場開発の子会社、日本自動車サービス(東京都千代田区)も先行して活用している。
日本駐車場開発は、主にビル内にある駐車場を借り上げて、ビル周辺の企業に貸し出す事業などを展開している。10年ほど前に、稼働していない駐車場にクルマを置いてカーシェアリングサービスを展開するようになり、2011年に会社組織にしたのが日本自動車サービスだ。
同社は、新たにスマートドライブの走行データを基にしたコンサルティングを行い、クルマを所有している顧客に対して、より効率的な運用を提案してビジネスにつなげようとしている。
例えば、関東一円に営業展開してきたが、事務所を東京に集約した企業に対して、コスト削減のソリューションを提案できる。営業車両の走行データを見ると、東京から千葉まで行き、さらに神奈川に寄って東京に戻ってくるようなケースが多々見られた。
そこで、東京に所有している車15台のうち7台を千葉市、水戸市、さいたま市、高崎市、横浜市に配備。エリアの担当者は電車で各都市に移動し、そこから車を使って営業活用するようになった。その結果、ガソリン代や移動中の人件費で年間約2300万円相当のコスト削減効果があったという。