プロ野球の福岡ソフトバンクホークスは今シーズン、本拠地である福岡市のヤフオクドームなど合計4カ所に、電波をボールに当てて速度などを測定する新型センサー装置を導入した。ボールの速度だけでなく、回転数や角度などのデータを精緻に測定できる。より客観的なデータで戦略を立てたり、投手の体調変化を察知したりできるようになる。

ヤフオクドームに設置したレーダー
ヤフオクドームに設置したレーダー

 専用の装置は軍事用のレーダー追尾システムを応用したもので「トラックマン」と呼ばれる。観客スタンドのエリアに取り付けてあり、投球の初速や回転数、曲がった角度、打者が打ち返した球の速度などのデータを精緻に取得できる。

 福岡ソフトバンクホークスの三笠杉彦取締役兼執行役員球団統括本部副本部長兼企画室室長は「プロのスコアラーでも、人によって球の曲がり具合の認識が異なることがあり、カーブなのかスライダーなのか判断が分かれる場合がある。こうしたことが客観的に判断できるようになる」と説明する。例えば、投手のボールをリリースする場所が疲労などでずれた場合、それをデータとして把握して具体的な数値を持ってアドバイスするといったことが可能になるという。

福岡ソフトバンクホークスの三笠杉彦取締役
福岡ソフトバンクホークスの三笠杉彦取締役

 トラックマンは複数台のカメラで撮影して画像を処理する従来装置に比べて、設置の自由度が高いため、投手のブルペンなどにも配置できる。実際、ヤフオクドームとブルペン、福岡県筑後市に新設されたファームの本拠地「タマホームスタジアム筑後」と室内練習場の合計4カ所に設置している。

故障する予兆をとらえて先回り

 今後は、選手の体のコンディションにもデータ分析を活用していく考えだ。本格的な活用はこれからだが「ゲーム中だけでなく練習中などのデータを見ることで、選手に異変があったら休養を促すなどしていきたい。無理をして出場し故障してしまう選手もいる」(三笠取締役)。まさにメーカーであれば、高価な製造装置が故障する予兆をとらえて先回りで対処。生産ラインの停止を回避するような取り組みと同様である。

 ソフトバンクホークスは2010年頃からチームの戦力強化に、「セイバーメトリクス」と呼ぶプロ野球では一般的となったビッグデータ分析を活用している。選手の出塁率や長打率などの指標を蓄積し分析、チーム編成の参考にしている。ソフトバンクは2011年に3軍を創設している。「今後、3軍に入って1軍で活躍する選手が、どのような課程で成長してきたのかのデータを分析して活用することも可能になるかもしれない」(同)。

 球団としてのデータ活用体制は専門の分析部隊を擁しているわけではない。スポーツデータ分析の企業から専門家を招いたり、セイバーメトリクスの運用について専門家と契約して定期的にレポートを出してもらったりしている。今後はソフトバンク本体のビッグデータ戦略本部と連携し「様々な知見の中から野球の分析にマッチするものを活用していきたい」(三笠取締役)との考えだ。

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