機械加工品事業、電子機器事業を手掛けるミネベアミツミは自社の高精度荷重センサー技術を生かして「ベッドセンサーシステム」を開発し、介護市場に参入する。リコーと共同で事業展開し、2021年3月期に30億円の売上高を目指す。

 ベッドセンサーシステムは、ベッドの4つの脚の下にセンサーを設置。分解能10万分の1という性能(体重50kgであれば0.5g単位で測定可能)を生かして、ベッドに乗った人の参考体重、体の動き(体動)、活動量推移、呼吸波形(リズム)をリアルタイムにモニタリング可能にする。ミネベアミツミの社内研究では、センサーから推定した呼吸数や心拍数と既存の検査機器での値に相関が確認できているという。

データは100ミリ秒ごとに取得

 データは100ミリ秒ごとに取得し、ベッド下に置いたログ取得端末で生データを解析して、ベッドに寝ている、体が動いたなどの情報をWi-Fiを通じて送信する。ベッドをIoT化する仕組みと言えるだろう。

 まずは介護施設への導入を想定している。体動からベッド上の体の位置を把握し、転落しそうな人を発見して、介護士が事前に対応できるようにする。体重測定のような検診業務を軽減することもできる。これにより、介護施設の介護レベル向上や、働く人の業務負荷軽減を期待できる。

ベッドセンサーシステムのイメージ
ベッドセンサーシステムのイメージ

 ミネベアミツミは2017年3月期、「センシングデバイス」事業全体で前年比6.7%増の383億円を売上高を上げていた。その主力商品の1つとして、高精度荷重センサーの事業展開をしてきた。

 「精肉店の秤、体重計、トラックのスケール、車載用センサー、ゲーム機器でも使用されている。この分野で当社は60年の歴史があり、当社調べではトップクラスの供給力がある。それが競争力になっている」(ミネベアミツミ電子機器製造本部電子デバイス部門センシングデバイス事業部システム技術部の能登雅俊部長)

 このセンサーの事業領域の拡大を目指し、2015年から千葉大学大学院医学研究院と共同で、生体情報のモニタリングシステムを開発してきた。「ベッド上の被験者の荷重を、高分解能で測定するためのロードセル配置」や「被験者の重心軌跡から体動を特定し、呼吸などを検出する基本アルゴリズム」などでは日本国内での特許を取得している。

 本システムの提供を通じて、新たな利用シーンを想定したセンサー開発にもつなげる。

UX次第で使われないシステムに

 リコーは自社製品の遠隔サポートシステム「@Remote」などで培った技術を応用して、ログ取得端末からのデータ収集、蓄積を担当。また、介護士などのUX(ユーザーエクスペリエンス)を左右するデータ表示とアプリのUI(ユーザーインターフェース)をミネベアミツミと共同で開発する。さらに、既に多くの介護施設にシステムを提供している強みを生かして、販路開拓や顧客サポートもリコーが担当する。

 リコーの事業開発本部副本部長ヘルスケア事業センター所長でヘルスケアマーケティング室室長の村上清治理事は、「ベッド上の身体の動きでどこまでいけばアラートを出すのか、それは介護施設によってしきい値が違う。ここがビジネスのポイントで、既存のシステムではアラートが出過ぎて使えず、機能を切ってしまうところも少なくない」と、センサーの精度と同様にUXも重要だと指摘する。

 ベッドセンサーシステムは2018年度早々に事業展開を始める。売上高目標の30億円について、「課金モデルは検討中だが、介護施設の病床数、2020年の65歳以上の人口数などのユニバースから算出したあくまで目標のレベル」とミネベアミツミの能登部長は語るが、リコーの村上理事は「獲得するシェアを基にしているが、これはかなり控えめに出している。介護士の負荷は高く、働きやすい職場を実現するために介護施設からのニーズは高いとみている」と意欲を見せる。

 今後は、人工知能(AI)の活用や、病院への導入も視野に入れる。介護記録や病院での看護記録などのデータとベッドセンサーのデータを連携させて、病気の予知や予後の最適なサービスの提供を支援する。さらに、2017年1月に経営統合した旧ミツミの温湿度計や血圧計などのデバイスも含めてデータを収集し、介護・医療・育児などにおける統合型情報サービスプラットフォームへ発展させることを目指す。

 包括的な介護・医療データの収集には、様々な医療機関や企業と協調領域を持つことが必要だ。「どういう形でほかの医療機関、企業との連携が必要になるか両社で話しているところ」(リコー村上理事)と言う。