ぐるなびは今年6月、全社のデータ分析体制を確立した。約8人のデータ分析部隊を新規事業担当役員の直下に移管。従来のWebログの分析やメールのレコメンドに加えて、各事業部門と連携した新規のビジネスやサービスの立ち上げ支援も強化していく。
データ分析部隊は企画第2部門ビジネスソリューショングループとして、分析案件や新規事業・サービスの開発に取り組んでいる。従来はWebログの解析やメールでのターゲティングを行うためのエンジニアの部門であったが、新規事業も担当することを明確にして全社のデータ分析部隊としての位置づけを明確にした。
データサイエンティストは「企画かつ分析」「エンジニアかつ分析」、いずれかのスキルセットを持っているという。「分析の結果をぐるなびのサービスへと組み込んでいくため、RやPythonなどのプログラミングのスキルも重視している」(企画第2部門 ビジネスソリューショングループの清水真理子リーダー)。
データを活用した新事業の一例としては、食に関連したトレンドの予測に基づく商品開発支援に取り組んでいる。次に来るトレンドを、ユーザーの見ているページや場所、お店が掲載するメニューなどから予測するというものだ。ぐるなびに掲載されているメニューの情報などは「基本的に加盟する店舗側が入力した、信頼できる1次情報である」(清水リーダー)ことの強みを生かしていく。
例えば、昨年9月にはお菓子メーカーの山芳製菓(東京都板橋区)と連携して、ぐるなびのデータから見いだしたトレンドを基にお菓子を開発し、発売した。ぐるなびの膨大なグルメ検索データや飲食店データなどを分析した結果、「『塊肉』への注目度が急上昇している」(清水リーダー)ことが分かった。そこで「男気×ぐるなび 塊ビーフ」という商品名のポテトチップスを開発した。「肉の旨みにガーリックを効かせ食べ応えのある味わいに仕上げた」(山芳製菓)という。売り上げについては非公表だが、ソーシャルメディアなどで話題となったという。

今年4月にはユーザーが設定した、食の好み、居住エリアや家族構成、ライフスタイルなどのデータを統合的に分析。店舗の一次情報などと掛け合わせてマッチ率を算出し、Webサイトやメールでレコメンドする「お好みグルメ」のサービスを開始した。
ぐるなびのデータ分析部隊の転機は2014年。2013年秋にメールやWebのバナーでのターゲティングを行う部隊として立ち上げ、顧客セグメンテーションを細かくするなどで反応率のアップなどの効果を出しつつあった。さらに事業に貢献するため、2014年にデータ分析チームの強化・立ち上げのコンサルティングを受けた。
コンサルティングによって統計的分析手法のスキルなどを強化し、「自前の指標を確立することが重要であることを学んだ」(清水リーダー)。また、店舗の1次情報は同社の強みであるが「データが必ずしも使いやすい形で整備されていないことも認識し、要望があったときにすぐに使えるように改善した」(同)。外部のコンサルティングはEMCジャパンに依頼し、2015年にはデータの分析・活用のプロジェクトの進め方についての支援も受けた。
データ分析チームは常時10~15本の案件に取り組んでおり、各事業部からは「こんなデータがほしい」「こんな分析がしたい」といった問い合わせが増えている。店舗の1次情報と独自のKPI(重要業績評価指標)とを組み合わせ、新事業やサービスの創出を加速していく考えだ。