リクルートホールディングスの人工知能(AI)研究の構想の一端となるパートナーシップ戦略が明らかになった。Recruit Institute of Technology(RIT)は10月、AIを活用した新規ビジネスモデルを、既存事業にアドオンする形で複数公開する予定だ。RITは今年4月にAI研究所として再編されたばかり。スピード感を持って研究を進め、米フェイスブック、米グーグルなどに並ぶ世界水準の研究を目指す。

 サービスにおけるAI活用は既にベータ版として密かに始めているという。RITの石山洸所長は詳細を明かさないが、「(人材など)マッチングビジネスをやっている中で、顕在化されたニーズのマッチングだけでなく、潜在的なニーズのマッチングのアルゴリズムを課題感として持っている」と語り、「AIによって、顧客と広告主のマッチング数を最大化する」ことを目指す。

 リクルートは、「2020年に総合人材サービス領域でグローバルNo.1、2030年に人材領域・販売促進支援領域でグローバルNo.1」というビジョンを掲げており、石山所長はAIに着目する理由を、「既存ビジネスの効率化だけでなくディスラプティブ(破壊的)な技術やビジネスモデルのために活用したい」と語る。

 紙媒体からネットサービスへ、既存の事業モデルを“破壊”する可能性があっても、環境変化に応じて生まれ変わってきた。そうしたリクルートの破壊的な変化を、AI活用で再度起こそうというのだ。

Recruit Institute of Technologyの石山洸所長
Recruit Institute of Technologyの石山洸所長

 AIの技術レベルをいかに世界水準へと高めていくか。石山所長はその活路を社内外との連携にあるとみる。

 「世の中にある中央研究所とは根本的に異なる組織を目指している。インターネットの場合、データは事業の現場に貯まっていくので、現場と研究所が近い方が速いスピードで研究が進む。さらにグループ会社や外部の会社も含めてオープンイノベーションを起こしていく」

 4月は十数人だった研究者は、新たに3~4人(外国人を含む)を採用。博士号を取得済みか博士と同等の成果を上げていることはもとより、英語が話せて(TOEICは850点以上)、ビッグデータを扱った分析の経験があり、社会を変えたいという情熱を持っている──同社が求める人材はなかなか採用できないのが現状だ。

 採用面接を行った約100人の中で上記の条件を備えているのは二十数人、さらにスケールアップできる力がある人材は3~4人だった。年内にあと数人の採用を計画しているが、人材が足りない。

 そこでRITは世界を舞台に産・学・個と連携。(1)社内(リクルートグループ)、(2)AIパートナー、(3)IoT(Internet of Things)パートナー、(4)データパートナー、(5)大学パートナー、(6)データサイエンティストといった6分野のコラボレーションパートナーを想定し、世界の英知を迅速に取り込む「オープンイノベーションラボ」を実現しようとしている。

産・学・個のパートナーシップで世界の英知を取り込むことを目指す
産・学・個のパートナーシップで世界の英知を取り込むことを目指す

個人データサイエンティストと連携

 7月16日~10月1日、世界最大のデータサイエンティストコミュニティ「Kaggle」との日本企業では初の共催となるというデータ予測コンペティションを開催する。リクルートライフスタイルが運営する割引チケット共同購入サイト「ポンパレ」におけるクーポン購買予測をテーマにコンペを開催する。

 1年間弱のクーポンの購買データ(提供者の業態、利用条件、価格、購入者属性など)を基に、その後の1週間のクーポンの購買を予測してもらうというもの。個人データサイエンティストとのコラボレーションを目指す取り組みの第1弾となる。Kaggleには世界に約30万人のデータサイエンティストや研究者が登録している。

 「予測モデルが良ければ、サービスに採用する。今後を見たときには、フリーのデータサイエンティストにリクルートを認知していただき、実際のビジネスで連携したいと考えている」と、リクルートストラテジックパートナーズの加藤真吾バイスプレジデントは話す。

 6つのパートナー戦略はすべて公表されているわけではないが、既に大学パートナーについては今年4月にその取り組み内容を発表。黎明期から機械学習の基礎・応用研究に幅広く取り組んできた米カーネギーメロン大学のトム・M・ミッチェル教授、情報検索分野における代表的な研究者である米ワシントン大学のオレン・エチオーニ元教授(米アレン人工知能研究所所長)、膨大なデータの中からパターンを見つけるための代表的な機械学習手法であるトピックモデルの第一人者、米コロンビア大学のデビッド・M・ブレイ教授がアドバイザーに就任している。

 人工知能の世界的権威である3人の著名研究者とは、スカイプを通じてミーティングをしている。

 ミッチェル教授は、リクルートの事業領域であるHR(ヒューマンリソース=人事)に詳しく、製品戦略について話していることが多い。エチオーニ所長とは研究所運営について話をしている。ブレイ教授とは、リクルートのデータにトピックモデルをどう適用していくのか、未発表の論文の内容も含めて、次にやりたいことを深く議論している。

 「3人とも、たくさんのデータを抱えているリクルートに魅力を感じていただいている」(石山所長)と言う。AI、IoT、データなどのパートナーとの連携は順次公開していく方針。AI研究とビジネスへの活用をスピード感をもって進め、2020年、2030年のビジョン達成に貢献していく考えだ。

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