電力需要予測の世界的なコンペティション「GEFCom2017」で、日本気象(大阪府大阪市)が優勝した。コンペは3回目となり日本勢の優勝は初めてとなる。同社は分析手法よりも欠損もある生データの適切な処理が勝因だったと分析する。優秀な分析には「1にデータ、2にデータ、3にデータ」が同コンペ決勝進出者の合い言葉となった。

 GEFCom(Global Energy Forecasting Competition)は米ノースカロライナ大学のタオ・ホン教授が主催し、IEEE Power& Energy Societyが後援するコンテスト。第3回となる今回は世界各国の企業や研究機関から約100チームが参加して、予測分析の腕を競った。

 2016年秋に6回にわたる予選がスタート。全チームに、米国の北東地域の10カ所の過去11年間の電力使用と気温、湿度のデータが1時間単位で提供された。そして米国の祝日カレンダーとあわせて、翌月の電力使用量を確率予測するのだ。そして実際の使用量と比べて精度が評価されていった。6回の予測の総合評価で決勝進出チームが決まった。

 日本気象でコンペに参加したのは、グローバルビジネス推進室。普段から風力発電の発電量予測などに取り組んでおり、予測分析の知見を持っていた。

 コンペでは、電力使用量は10%の確率で何kW以下、20%の確率で何kW以下…、90%の確率で何kW以下と予測をするルールだった。神田勲技術フェロー・室長は、「何kWと予測してもほぼ必ず外れて実用的ではないため、ここ数年は実際の分析でも主流の方法だ」と説明する。予測の受け手側は自らのリスクで、どの予測値を採用するか決められる。

電力需要の確率予測の例。GEFCom2017予選データ(気象予測なし)に基づく。色帯の下端が10パーセンタイル値、上端が90パーセンタイル値。実線が実測値
電力需要の確率予測の例。GEFCom2017予選データ(気象予測なし)に基づく。色帯の下端が10パーセンタイル値、上端が90パーセンタイル値。実線が実測値

 決勝には12チームが進むが、日本気象は11位とギリギリで予選を通過した。日本気象が風力発電の発電量予測に取り組み始めたのは2015年。同年に風力発電が盛んなデンマークのコペンハーゲンにオフィスを作り、欧州の技術、ソリューションを日本に持ち込み始めた。

 神田室長が日本気象に加わったのは昨年3月で、「前職は大学で大気汚染の研究をしていた。統計分析の経験は日本気象に中途入社してから1年ほど」と明かす。

予選は11位で滑り込み、決勝戦では優勝

 経験も浅く滑り込みの参加となった決勝戦だが、同社は見事1位になった。その勝因は、さわり慣れた気象データの前処理にあったようだ。

 決勝の内容の詳細は非公開だが、「問題は格段に難しく、気象データのデータ量は予選の約50倍。電力会社の現場で使われるような生データであり、欠損もあるひどいものだった」と神田室長は振り返る。

 他チームとの違いは、「分析手法にニューラルネットワークを使うところもあったが、我々は重回帰分析をベースにした。(統計解析ツールとして一般的な)Rでも書けるようなものだった。ただし、他のチームは提供された気象データをそのまま分析に用いたとみられるのに対して、我々は普段見るようなデータなので適切な処理をした」(神田室長)ところにあった。

 表彰式は6月22日、予測分析に関する国際会議(International Institute of Forecasters)と同会場で開催された。同時開催されたワークショップでは、「分析は1にデータ、2にデータ、3にデータと、とにかくいいデータを準備することが重要とされた」(神田室長)。まさにこれが日本気象チームの勝因だった。

 日本気象はこれまで、例えば販売予測をしたい小売店に気象データを提供することで収益を上げてきた。しかし、気象データのオープン化が進み、データ提供だけでは収益向上は期待できない。今後は風力発電での気象データを基にした発電量予測など、顧客の課題解決に直結するソリューションの提供まで踏み込んで、事業を拡大させていく。

 風力発電は今後、洋上発電施設の建設が期待される。また、太陽光発電以上に気象データの分析が精度を高める。例えば夜は発電量がゼロの太陽光発電と異なり、風力発電は24時間にわたり予測する必要がある。

 予測精度の向上には「気象データの特性を熟知していることが重要だということを今回のコンペで強く感じた」と神田室長は、予測ソリューションの提供へ意を強くした。この実績を武器に、小売電気事業者、送配電事業者、発電事業者などとの実証実験を実現させて、今後の事業展開へ備えていく考えだ。

過去の気象予測、発電所、発電量のデータで関係性を学習し、将来の発電量を予測する
過去の気象予測、発電所、発電量のデータで関係性を学習し、将来の発電量を予測する
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