ソフトバンクは携帯電話サービスの運営やビッグデータの分析・販売など自社事業における人工知能(AI)の活用を加速している。今年4月に新設したAI戦略本部に、旧ビッグデータ戦略本部を統合。深層学習の技術者を取り込んで、1カ月220億件以上の人流データの解析の効率化や新たなインターフェースの開発に乗り出していることが本誌独自取材で分かった。

 今年4月1日付けで、テクノロジーユニットIT統括にAI戦略本部を新設。本部長に技術統括ビッグデータ戦略本部本部長の柴山和久氏が就いた。旧ビッグデータ戦略本部は、ビッグデータ統括部として、柴山氏が統括部長を兼務する。また他の本部からAI&データサイエンス部を移管した(図)。

ソフトバンクの新たなビッグデータ・AIの活用体制
ソフトバンクの新たなビッグデータ・AIの活用体制

 AI戦略本部のミッションは、ソフトバンクのグループ内外のデータ関連部署や会社の持つデータを把握し、それを活用して効果を出していくことだ。AI&データサイエンス部は、各種の自社サービスの高度化や社内業務の効率化が対象だ。本部全体で約120人の陣容で、これに外部企業の常駐者なども含めて分析・活用に取り組んでいる。以前からビッグデータ分析で取り組んでいた機械学習に、ディープラーニング(深層学習)に強い約30人の技術者が加わり、相乗効果の創出を目指す。データサイエンティストは約30人が在籍している。

 柴山本部長は「深層学習などのAI技術者、データサイエンティストとも今の10倍は必要」としたうえで、「IoTの普及を考えるとデータがこれまでと桁違いに増えていく。一方で何が要因なのか、全世界のデータからトレンドを読み解いていかないといけない。そうなるとデータサイエンティストが何人いても足りないので、AIを活用していくのは自然な流れだ」と説明する。

6月末に提供を始めた「混雑マップ」の画面
6月末に提供を始めた「混雑マップ」の画面

 以前から旧ビッグデータ戦略本部では、スマートフォンアプリの利用者の位置情報と電波状況を許諾を基に匿名化データとして取得。ビッグデータを集計・分析し、携帯電話事業の接続環境の改善や流動データなどとしての販売に活用していた。今年6月末には、世界中の位置データを収集し、混雑している場所を表示する「混雑マップ」として無償のスマホアプリの提供を始めた(画面)。20分前の混雑状況を表示できる。

 これらのデータの収集や販売で中核を成して連携しているのが子会社のAgoop(東京都港区)であり、柴山氏が代表取締役社長兼CEOを務めている。Agoopがラーメン店を検索するアプリ「ラーメンチェッカー」などを通して位置情報を取得するほか、世界の位置情報を持つ事業者と提携してデータを収集している。その量は全世界で1カ月当たり220億件に上るという。1件の単位はおよそ30分間隔の端末の位置である。AIはこれら膨大なデータの分析・整理だけでなく、「AIを活用した話し言葉による新たなデータ検索などのユーザーインターフェースにも活用していく」(柴山本部長)。

 データ販売関連のビジネスは、Agoopの人流データをあわせて年間6億円程度にとどまっているもよう。全世界の混雑状況を示すメッシュデータのほか、人の流れを示すポイントデータの販売で加速したい考えだ。柴山本部長は「全世界の旅行者のインバウンド分析、世界各地の経済状況の分析などへの活用を提案していきたい」と期待を込める。