リクルートホールディングス子会社で求人専門検索エンジンを運営する米インディードが、データ分析力を武器に急成長している。サービス開始以来、累計30億件の求人情報を掲載してきており、現在、世界各国の約1600万件の求人情報を登録している。そのビッグデータと分析力を生かした機能の一つが「年収推定」だ。

 求人専門検索サイト「indeed」はインターネット上の求人情報を自動的に収集したり、企業からの情報登録を無料で受け付けたりして、大量の求人情報を検索できるのが特長だ。世界各国の1600万件程度の求人情報を検索できるという。求人情報を検索結果の上位に表示できる広告事業で収益を上げている。求人サイトなどが広告を出稿して集客に活用している。

勤務地、役職、職務内容で推定

 転職先を決める上で給与は重要な項目だ。indeedで収集した求人情報のうち給与を公開しているものは自然言語処理で給与情報を抽出して、検索結果などに表示している。しかし、「給与を示している求人情報は日本では90%に上るが、米国では15%ほどしかない」(インディードジャパンのサラリーチームエンジニアリングマネジャーのマシュー・ダガン氏)のが実情だ。

 そこで開発したのが年収の推定機能だ。推定のアルゴリズムは、indeedに掲載した過去1年程度の求人情報と、そのうち給与を公開する一部の情報や利用者が会社の評価を投稿する際に記入した給与情報を「教師データ」に用いて、ディープラーニングで作成した。

 予測に使う項目は「勤務地」「役職」「職務内容」の3種類。職務内容では登場する単語から上位5000語を抜き出して、各語の給与への影響度を分析した。もちろん給与相場は変動があるため、定期的にモデルを見直している。

 推定アルゴリズムを使い、特定の求人情報に対して、最低給与、最高給与、平均給与を算出。給与情報が公開されていない求人情報でも、検索結果から「年収800万円以上」などの条件を指定して絞り込めるようにしている。なお、求人情報ごとの具体的な推定額は表示していない。

 同社はサービス開始以来、累計30億件の求人情報を掲載してきた。蓄積したビッグデータを生かして、米国では「Job Trends」というサービスを提供している。例えば「ビッグデータ」などのキーワードを入れることで関連する求人件数の推移を見たり、主要な都市別に人口当たりの求人件数を見たりできる。今後、職種別の平均給与の推移などの情報も追加することを検討している。

「Job Trends」では特定のキーワードに関連する仕事の登録件数の推移が分析できる
「Job Trends」では特定のキーワードに関連する仕事の登録件数の推移が分析できる

 インディードの従業員は全世界で3000人おり、そのうち1500人がサービス開発にかかわるITエンジニア。手軽にA/Bテストを実施して、ヒートマップで視覚的にユーザーの反応を見られるインフラも導入している。米国ではユーザーの反応を見ながら、給与帯の表示デザインを変更した。

米国におけるソフトウエアエンジニアの給与分布の分析画面(新デザイン)
米国におけるソフトウエアエンジニアの給与分布の分析画面(新デザイン)
[画像のクリックで拡大表示]

 2015年の月間訪問者数は平均1億7000万人と前年比38.2%の増加、売上高は同83.1%増の843億円に達した。同社のビッグデータ分析結果の活用用途は現在、一般ユーザー向けが中心だが、採用活動を進める企業へ提供すれば、さらに大きな価値を提供できそうだ。