独シーメンスは、データ分析、リモート監視、サイバーセキュリティ対策などの機能を備えた独自のデータ分析プラットフォーム「シナリティクス(Sinalytics)」を開発した。2015年12月に発表し、利用する鉄道会社が競合から顧客の60%を奪うなどの成果を上げ始めている。
風力・化石燃料タービン、鉄道車両、ビルメンテナンスシステムといった30万台超の設備に取り付けたセンサーからデータを収集・分析。得られた情報を基に、デジタルサービスや業界特化型の新アプリケーションを開発し、顧客企業に販売する。
同社は、「デジタル化の進展に伴う新規事業の可能性を見つけ出すことが狙い」とし、「顧客は資産の性能や稼働率の向上、エネルギーの効率化によるコスト削減、セキュリティの強化が実現できる」としている。
Sinalyticsが提供するサービスは、工場など製造現場向けの「稼働状況診断」、交通インフラやエネルギー分野を対象にした「パフォーマンス保証契約」、さらに、医療など、特定業界向けの「クラウド情報基盤」などが挙げられる。
稼働状況診断サービスでは、9000台超のタービンの稼働状況をリモート監視し稼働を最適化。中でも、風力タービンは、検知したトラブルの85%をリモートから修復している。
独シーメンス デジタルファクトリー部門モーションコントロール事業部内で産業用ソフトウエアの責任者であるミハエル・スクバッツ氏は、パフォーマンス保証契約の事例として、スペインの鉄道会社レンフェ(Renfe)を挙げる。同社は継続的なリモート監視によるデータ分析で、故障予兆と適切なメンテナンス時期を把握し、事前に対策を講じている。その結果、マドリードとバルセロナ間を結ぶ高速列車では、99.9%以上の定時運行率を達成した。
同時にレンフェは、同区間で到着が15分以上遅延した場合に、すべての乗客に対して払い戻しを行う「パフォーマンス保証サービス」を開始。その結果、これまで同区間で飛行機を利用していた乗客の60%が、鉄道に乗り替えたとのことだ。
早めの失敗が早期の成功の糧に
Sinalyticsの提供にあたり同社が注力したのは、新たなサービスアイデアをすぐに試用できる組織作りだ。社内に「Smart Data Lab」を新設し、データサイエンティストと各産業領域のノウハウを持ったエキスパートを集中させた。
同ラボでは「Teradata Aster」「Hortonworks Data Platform」「R」「KNIME」といった分析プラットフォーム・ツールを使い、新アイデアをすばやく分析・検証し、サービス化の可能性を測定している。スクバッツ氏は、「アジャイル的手法でデータ分析サイクルを回す。早めの失敗を経験することは、早い成功の糧となる」と説明する。
サービス化のプランを決め、業種・業界に特化したアルゴリズムを実装するアプリケーションを開発。開発後は、カスタマイズ可能な分析ソリューションパッケージとして提供している。
