損保ジャパン日本興亜は8月、安全運転支援のスマートフォンアプリ「ポータブルスマイリングロード」の一般公開を始める。顧客との日常生活における接点強化や、新規顧客獲得の契機にしていく考えだ。

 同社は今年1月、ポータブルスマイリングロードを自動車保険の契約者に限定して提供開始した。8月には機能を大きく向上させ、一般公開する。自動車運転の「安心」「安全」「快適」を実現する機能を用意する。

 安心面では、事故時にワンプッシュで損保ジャパン日本興亜や警察などに事故連絡ができるようにした。8月には大きな衝撃を検知した場合の自動通知機能も追加する。

 安全面では、「One to One 運転診断」機能を提供する。スマホのGPS(全地球測位システム)と加速度センサーから運転状況を把握し、運転終了後に総合得点を示す。「セーフティ」「アクセル」「ブレーキ」「エコ」などの項目別に、いい運転だった場合はメダルを付与するほか、総合得点の全国ランキングを公開して、ゲームを楽しむような感覚で安全運転ができるよう支援する。

 既に提供する法人向けスマイリングロードのノウハウを個人向けにも生かす。例えば、ポータブルスマイリングロードの利用者は、スマートフォンをクルマのダッシュボードなどに固定せず、洋服のポケットなどに入れており、測定環境が悪い可能性もある。そこで、適切な運転診断ができているか、固定したドライブレコーダーで診断する法人用サービスと同時に診断するテストを行い、結果を比較して、精度を改善した。

渋滞も考慮したナビゲーション検索をして(上)、ドライブ後には安全運転の診断結果を総合得点で表示する
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渋滞も考慮したナビゲーション検索をして(上)、ドライブ後には安全運転の診断結果を総合得点で表示する
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渋滞も考慮したナビゲーション検索をして(上)、ドライブ後には安全運転の診断結果を総合得点で表示する

 一般公開時には、個々の運転特性に応じたきめ細かい助言をアルゴリズムで自動作成して提供する方針だ。また、同社が保有する事故データを分析して、事故多発地点に近づいたら地図に表示するなどリアルタイムな通知、警告機能も加える。

 快適面では、ナビタイムジャパン(東京都港区)が提供するアプリ「ドライブサポーター」の有料機能を無料提供している。同アプリは渋滞を考慮したルート検索が特長。「(30分以内の移動の場合)ルート検索の到着予想時刻が5分以内の誤差に収まる確率が90%以上」(損保ジャパン日本興亜リテール商品業務部企画・収支グループの杉本光祐リーダー)という高い精度を誇る。

顧客以外には利用期間を制限も

 アプリを無料で提供して見合う効果は得られるのか。杉本氏は、「事故率の低下による保険金の支払い金額の削減と、新規顧客の獲得の両方が期待できる」と語る。また「損害保険会社は事故時という非日常時しか顧客接点が持てなかった。アプリによって日常の運転においても接点が持てるのは大きい」(杉本氏)と言う。

 8月以降は一部機能の有料化や、他社自動車保険の契約者が無料で使えるのは次の満期日までにするなどの制約を設けることも検討している。衝突時の自動通知といった顧客限定の機能も訴求して、新規顧客獲得に結びつける。