あいおいニッセイ同和損害保険は今年10月以降に、運転挙動反映型テレマティクス自動車保険を発売する予定だ。安全な運転をするドライバーには保険料を割安に設定する。同社は価格競争力と収益面で適切な保険料を設定をするために、既に様々なサービスを通じて、運転挙動と事故の関係性を示すデータの収集、蓄積を進めている。

 あいおいニッセイ同和損保が発売を準備している保険は、クルマのスピード、ブレーキ、アクセル操作といったクルマのIoTデータを取得し通信で送信、分析して保険料に反映させる。毎月の運転挙動に応じて保険料を決め、年間2万キロメートル走ると最大で約20%の差が付く予定だ。現行の自動車保険における等級制度と組み合わせて保険料を設定する。

 同様のサービスも登場している。ソニー損害保険は「ドライブカウンタ」と呼ぶ機器を一定期間以上設置して、スムーズな運転をした人には保険料をキャッシュバックする自動車保険を既に販売している。

 損害保険ジャパン日本興亜は、運転診断結果に応じて保険料が最大20%安くなるテレマティクス自動車保険を2017年内に発売すると発表している。スマートフォン用カーナビアプリ「ポータブルスマイリングロード」で収集した走行データから、安全運転度合いを分析する。

安全運転度合いは毎月診断

 そうしたサービスとの違いについて、商品企画部企画グループの梅田傑担当次長は、「毎月の運転挙動を見て保険料を決めることで、継続的に安全運転を支援できるのが当社の特長」と話す。そしてアプリではなくクルマから直接データを取ろうとしていることも他社とは異なる。

 同社は2015年頃から、運転挙動反映型テレマティクス保険の提供に向け、着々と準備を進めてきた。

 2015年3月にはテレマティクス保険大手である英ボックス・イノベーション・グループ(BIG)を買収した。

 BIG傘下で保険事業を展開する英インシュア・ザ・ボックス(ITB)は、保険料が高くなる若年層に向けて、一定距離分の保険料を先払いするプリペイド型の自動車保険を販売する。スピード違反や急ブレーキが少なく安全な運転をすると「ボーナスマイル」が付与されて、前払い金額内で走れる距離が長くなる仕組みだ。

 ITBは2010年5月にこの保険を発売して、累計契約件数は現在は約50万件程度で、累計走行距離は50億キロメートルを超えているという。これらの運転状況と事故のデータが蓄積されており、運転挙動反映型保険の保険料を適切に設定するアルゴリズム開発に役立つ。

 国内では2015年4月に、走行距離連動型保険「つながる自動車保険」を発売した。トヨタのカーナビに搭載するテレマティクスサービス「T-Connect」と連動して、1キロメートル単位の走行距離に応じた保険料が設定される。

走行距離連動型保険の「つながる保険」はトヨタのT-Connect対応者に提供
走行距離連動型保険の「つながる保険」はトヨタのT-Connect対応者に提供

 さらに運転状況に基づく安全運転アドバイスを毎月提供する。運転状況は「運転時間帯、1回当たりのドライブ時間、燃費によって決まる。ロングドライブは事故になりやすく、燃費はアクセルやブレーキワークで左右されるためだ」と梅田氏は説明する。

 現在は数千人が利用しており、ここからは国内での運転状況と事故に関する貴重なデータが集まる仕組みになっている。

スマホアプリで運転診断

スマートフォン用アプリを使った個人向けの安全運転支援サービスを提供している
スマートフォン用アプリを使った個人向けの安全運転支援サービスを提供している

 さらに今年1月からは、スマートフォン用アプリを使った個人向けの安全運転支援サービスを、保険契約者から募ったモニター向けに提供している。

 5センチメートル四方の車載器をダッシュボードに設置。そこで取得した運転挙動からブレーキ、アクセル、コーナーリング、スピード、スマホ操作の有無を5段階で評価し、スマホアプリ「Visual Drive」上で案内する。運転特性に応じたバッジをアプリ上で付与することで、自分の運転の得意・不得意を理解し、安全運転する意欲をさらに高めてもらう。

 5月には、衝撃を検知すると事故対応のコールセンターに通知し、家族にもメールが届く新機能を追加した。モニター期間は2018年9月までで、端末は無償貸与する。「モニターは数千人規模になる」(梅田氏)と言う。

 7月からは法人向けの安全運転支援サービス「Bizセイフティ」を発表した。Visual Driveのアプリを活用し、従業員向けの安全運転診断、管理者向けの従業員の運転傾向や狩猟位置の把握といったサービスを提供。データ取得にはスマホアプリのほか、専用機器も利用できる。対象は同社の自動車保険に契約する企業で、利用料は1台当たり月額600円。

 梅田氏は、「スマートフォンアプリで取得できるデータの精度、量は(クルマから直接取得できるデータに)劣るが、通信対応していないクルマも多く走っている。アプリを通じて集めたデータが(運転挙動反映型テレマティクス保険に)利用できるかを検証する」と話す。

 こうして様々なサービスを通じて収集したデータを分析して、運転挙動反映型テレマティクス自動車保険を開発する。さらに米国では、トヨタグループと共同出資会社のトヨタインシュランスマネジメントソリューションズUSAを昨年4月に設立。テレマティクス自動車保険のノウハウを、米国の中小損害保険会社に提供していく予定だ。

自動運転時代にノウハウ生きる

 自動運転が普及した将来、テレマティクス保険は不要にならないのだろうか──。梅田氏は否定する。

 「自動運転でも事故は起こる。それは機械の不具合か、周囲のドライバーや歩行者の責任か、はたまた第三者のハッキングか。事故原因を調べるには、クルマからデータを吸い上げて分析する必要がある。テレマティクス保険を提供していくことでそのノウハウになる」

 他社に先んじて提供することでノウハウを多く蓄積できる。ドライブレコーダーなどで撮影した映像分析による事故原因の分析にも取り組んでいく。

 トヨタは2019年に日米中で発売するほぼすべての乗用車を、通信機能を搭載した「コネクテッドカー」にすることを表明している。通信機能を備えていると保険料が安くなる可能性があれば、テレマティクス自動車保険がコネクテッドカー普及の後押しにもなると梅田氏は語る。

 ビッグデータ分析が付加価値となる商品の開発へ、あいおいニッセイ同和損保は社内体制の整備を進める。経営企画部内にテレマティクス事業室を設置し、同分野の調査、研究開発を進める。また、今年4月にデータサイエンス学部を新設した滋賀大学とは、ビッグデータを活用した保険関連サービスの高度化に関する調査研究を進める「日本セーフティソサエティ研究センター」を今春に設置した。

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