大阪観光局はインバウンド消費の拡大を目指し、マーケティングの強化を進めている。まずは現状把握を進めるため、昨年度に大阪の無料Wi-Fiスポット約4000カ所の3カ月間の約2000万件の利用ログを用いて訪日外国人の行動分析を実施した。今年度は具体的な集客、消費促進の施策を実施し、効果測定にこうしたビッグデータを活用していく。

 「観光は物見遊山的なものではなく、地域の総合的な戦略産業である。生産性と収益性を上げていく。そのためにはしっかりしたマーケティングリサーチをして、顧客分析、費用対効果の分析、効果測定をする必要がある」

 こう語るのは大阪観光局の溝畑宏理事長(大阪観光局長)だ。2015年に理事長に就任する前は、サッカーJリーグチームの大分トリニータの運営会社の社長を務め、2010年から2年間は観光庁長官も務めた人物だ。

時間帯別 拠点間の移動分析(「韓国語(地元民除く)」)
時間帯別 拠点間の移動分析(「韓国語(地元民除く)」)
※大阪観光局の分析レポートを基に作成

2020年には1兆1900億円へ

 溝畑理事長はインバウンド消費の拡大を目指す。2016年に8641億円とみられる訪日外国人の大阪での消費額を、2020年には1兆1900億円まで伸ばしたい考えだ。目標達成へはビッグデータ活用が欠かせない。

 大阪観光局では昨年度、現在約4000カ所に広がる無料Wi-Fiスポット「Osaka Free Wi-Fi」を中心に活用し、訪日外国人の動向を分析した。Wi-Fiは西日本電信電話、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム、エヌ・ティ・ティ・メディアサプライと協力して展開している。

 まず昨年4~6月のWi-Fiスポットの約2000万件の利用履歴を使い、朝、昼、夕方から夜それぞれの時間帯でどの国の人が、どの街を訪れ、どう移動しているかを分析した。分析はエヌ・ティ・ティ・メディアサプライが実施した。

 分析結果の多くは感覚的に把握していた通りであり、例えば国別に分析すると韓国から来た人は、朝は難波から心斎橋、日本橋辺りでの移動が多く、昼は大阪城へ、夕方から夜は梅田方面へと移動していた。

 しかし意外な発見もあった。その1つが、大阪市北区天神橋で朝10時に韓国からの訪問者が急増していたことだ。調べてみると、6丁目にある「大阪くらしの今昔館」という施設に100人ぐらいの行列ができていた。着物のレンタルが可能であり、その予約をするために並んでいるという。着物を着た写真をSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)へ投稿し、それがさらに人気を呼ぶのだ。こうした人に周辺地域も楽しんでもらうことが今後の課題となる。

時間帯別 滞在分析 「韓国語(地元民除く)」
時間帯別 滞在分析 「韓国語(地元民除く)」
※大阪観光局の分析レポートを基に作成

 訪日外国人の大きな不満の1つである通信環境の整備を効率的に進めるためにも、ビッグデータを活用している。携帯電話のつながる仕組みを使ったドコモ・インサイトマーケティング(東京都港区)の人口統計サービス「モバイル空間統計」を使い、訪日外国人が多く訪れているもののWi-Fiスポットがない地域を発見。優先してスポットを新設している。モバイル空間統計は1km四方の分析だが、Wi-Fiなら施設単位でよりきめ細かい分析が可能になる。

韓国人観光客の典型的周遊ルート
韓国人観光客の典型的周遊ルート
※大阪観光局の分析レポートを基に作成

 現状分析を終えて、今年度は施策の効果検証のための分析をする。

目標達成を検証するKPI設定

 大阪観光局は今年度の事業計画として、訪問数に加えて消費金額の最大化を目指し、それを大阪全体の経済効果へ波及させることを掲げている。そのために「24時間観光都市」「関西・西日本観光におけるハブ」「多様性あふれる街」をコンセプトと定めた。この検証のためには、例えば夜間の地域別の訪問施設数や、大阪周辺の府県を含めた周遊状況などがKPI(重要業績評価指標)となるだろう。

 また、消費金額の最大化を目指す上では、人の移動と連動して消費金額が増えたかの検証が課題となる。店舗のクーポンを配布する「Osaka Enjoy Rally」サービスの利用状況や、SNSの投稿内容など多様なデータの活用も必要だろう。

 「万博、IR(統合型リゾート)もあり、2020~2030年は大阪が花開く時期。大阪の都市としての戦略を作るのがこの5年ぐらいで、その司令塔になるのが観光だ」と溝畑理事長は意気込む。

 「観光立国として量から質への転換が求められている中で、IoTや人工知能を含めて、この業界が生産性、収益性を上げるためにイノベーションしないといけない」と、ビッグデータ活用を一層推進していく構えだ。

 なお、大阪観光局は、観光庁が定める日本版DMO(デスティネーション・マネージメント・オーガニゼーション)候補法人の1つとなっている。DMO候補法人は登録を受けると関係省庁による各種支援を受けられるが、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略策定、戦略実施のための調整機能を備える必要がある。それに伴い、各種データの継続的な収集・分析、KPIの策定とPDCAサイクルの確立が役割として求められている。DMOの広がりに伴い、大阪観光局のような観光ビッグデータの活用は一層進みそうだ。

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