サトーホールディングスは主力のラベルプリンターに自己診断機能などを搭載し、IoT(Internet of Things)への取り組みを本格化している。機器内のセンサーの情報などを分析することで、故障などに結びつく可能性を予測。あらかじめ保守を実施することなどで、サービスの人員のコストを2020年時点に最大で3割減を目指す。

各種センサーとネット接続による遠隔監視の機能を搭載したラベルプリンターを昨年8月に発売し、業界初のIoT対応として打ち出して、既に数千台が普及した。同時に保守サービスの「サトーオンラインサービス(SOS)」の無償提供を開始し、保守が必要と判断したら故障しなくてもサービス要員が駆けつけて対応する。
ラベルプリンターは、1台が寿命を終えるまでに約500万枚もの大量のラベルを印刷する。その間に工場において故障でいったん停止すると、製品が出荷できなくなることがある。そうした「顧客の機会損失を最小限にしたうえで、当社側のサポートコストも削減することを目指し」(長尾博史カスタマサポートユニット長)、プリンターの構造を見直したうえで、SOSに対応することで機器の保証期間を、従来の半年から5年まで一気に10倍に延長した。今後、導入する新機種は基本的にSOSに対応させていく。
熊本地震では遠隔地から正常を確認

現在、「スキャントロニクスCL4/6NX-Jシリーズ」の2機種が対応しており、顧客で稼働中の数十万台のラベルプリンターのうち約数千台がSOSに対応している。発売から1年も経過していない現在では深刻な故障は発生していないという。ただ今年4月に発生した熊本地震では現地の顧客拠点にあったSOS対応ラベルプリンターが設置場所から落下。そうした場合には従来、保守サービス要員が駆けつけて点検する必要があったが、SOSによって現地と遠隔から正常であることが確認ができ、早期の復旧につながった。
SOSで取得している稼働の情報はエラーや各種センサーの情報、発行枚数、通電状況などである。これらの情報を取得してセンター側でデータを分析している。湿度や温度など利用している現場での情報も今後取得する機能を搭載する。こうした故障や異常の情報が蓄積していくことで、「例えば、部品の抵抗値の波形がこうなれば、次にどのくらいで何が起こるかを予測できるようになる」(長尾ユニット長)。不具合だけでなく顧客の操作などの情報は新製品開発の参考にもしていく考えだ。

セキュリティポリシーなどの制限からネットに接続していない顧客もいる。そうした顧客でもサポートを受けられるよう、ラベルプリンターのディスプレーに異常などに対応した二次元バーコードを表示。バーコードをあらかじめアプリをインストールしたスマートフォンで読み取ることで、どのように対処すべきかの情報を得られるようにした。
サトーは2014年夏にSOSを開発するグループを立ち上げて1年で製品化にこぎ着けた。2017年にはデータを分析し、それを基に顧客に様々な助言を与える。例えば、顧客のセンター内に複数のプリンター装置を導入している場合、それぞれの負荷を分析して最適な配置を提案する。また、SOSで取得しているデータは基本的にすべて顧客に対して開示していくという。