国際会計事務所のPwCは、グローバルで監査精度の向上に取り組んでいる。国内では2017年3月期の決算から会計の見える化ツールと異常分析ツールを導入。監査の精度を向上させた。次の段階で、機械学習のアルゴリズムに、人間が気づかない異常を定義させる。

 国内では、PwCあらた監査法人(東京都中央区)が2017年3月期の決算から、PwCが独自開発した会計の見える化ツール「Halo for Journals(ヘイローフォージャーナル)」正式版を160~170社(半分以上は上場企業)の監査で導入。さらに同じく独自開発の会計の異常分析ツール「Halo Performance Analyser(ヘイローパフォーマンスアナライザー)」のパイロット版の運用を開始した。

Halo for Journalsのイメージ画面
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 PwCあらた監査法人パートナーで公認会計士の資格を持つ、同AI監査研究所の辻村和之研究所長は次のように語る。

 「例えば、1社当たり約30万件の会計仕訳データをヘイローフォージャーナルで見える化して、パフォーマンスアナライザーで異常分析を実施したとしよう。それまで数十時間かかっていた分析が数時間に短縮されるので、より深い異常分析に時間をかけることができるようになった。その結果、監査の精度が格段に向上した」

 PwCあらた監査法人では設立当初の2006年から、各企業の数十万件に及ぶ全会計データを入手してテストを実施している。その膨大なデータをExcelなどでグラフ化するなどしてきたが、ヘイローフォージャーナルに会計仕訳データを入力するだけで、売り上げや利益など会計の見える化が行えるようになったので作業が大幅に楽になった。

 さらにパフォーマンスアナライザーによって異常かどうか知らせてくれるので、その異常に関して時間をかけて深く分析できるようになり監査の精度が上がったというわけだ。

 異常なパターンの例としては、架空の売り上げを計上する、つまり売上高を水増しするために、入力担当者以外の通常予期しないユーザーが会計仕訳データを入力するようなケースがある。あるいは、経費を少なくするために、通常とは異なるパターンの会計仕訳データを入力するケースもある。こうしたケースに対して、現在はヘイローフォージャーナルを利用し、人間が被監査会社の特徴に合わせて異常なパターンを複数定義して、テストを行っている。

Halo Performance Analyserのイメージ画面
Halo Performance Analyserのイメージ画面
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機械学習で異常を定義へ

 ただし、現段階ではすべての異常を定義しているわけではない。また異常の定義は人間が行っているので、「人によって定義のズレが生じていた」(辻村所長)と言う。

 そこで、人工知能(AI)の活用によって人間が気づかない異常の定義までやらせようということになった。PwCあらた監査法人の中にAI監査研究所を設立したのはそのためだ。現在、同研究所と英国など海外のPwCと連携して機械学習アルゴリズムに異常を定義させる研究を進めている。

 機械学習アルゴリズムは、AIの開発企業が開発したものを活用している。ちなみに、会計コードについては世界で標準化されているので、海外で開発したツールを日本で利用しても問題ないという。