NTTドコモは子会社で電動アシスト自転車のシェアリング(共同利用)サービスを展開し、利用を前年比2倍のペースで伸ばしている。自転車にGPS(全地球測位システム)、FOMAなど通信関連機能を搭載して位置を把握し、自転車の配置台数を調整して利便性を高めている。走行履歴を参考にサイクリングコースを提案し、さらに利用を伸ばしたい考えだ。

 「感覚的には地下鉄だと15分かかるところが、5分で済む」。こう語るのは、千代田区や中央区、港区、江東区の東京都4区などで、電動アシスト自転車のシェアリング(共同利用)サービスを展開している、NTTドコモ子会社のドコモ・バイクシェアの井上佳紀氏だ。

 実際、東京都の地下鉄は東西を横切る路線に比べて南北を走る路線が少なく、自転車で移動したほうが地下鉄を乗り継ぐよりも早いケースが結構ある。「東西の移動でも駅からの徒歩距離や乗り換えの状況によっては効率的になるケースが少なくない」(井上氏)と言う。

 例えば、JR新橋駅から虎ノ門ヒルズに行く場合、東京メトロ銀座線の新橋駅から同虎ノ門駅まで乗り、そこから徒歩で目的地を目指すと15分程度はかかる。しかし、新橋駅近くにあるポート(駐輪場)で電動アシスト自転車を借りて虎ノ門ヒルズの駐輪場に乗っていけば、5分程度で済んでしまう。

港区役所に設置されている電動アシスト自転車のポート(駐輪場)
港区役所に設置されている電動アシスト自転車のポート(駐輪場)

FeliCaやスマホで無人レンタル

 ドコモ・バイクシェアとともに自転車のシェアリングサービスを運営している港区街づくり支援部の西川克介・交通対策担当課長は「雨が降っていなければ、自転車の“垂直移動”はとても効率的だし地球環境に優しい」と効果を強調する。急坂でも電動アシスト自転車なら楽々走れる。

 利用料金は1回会員の場合、最初の30分は150円(税別、以下同)。それ以降は30分当たり100円を支払う。月額会員は1カ月2000円の基本料を支払えば、1回当たり30分以内であれば0円。1日何回も利用できる。

 会員登録すれば機器の操作で簡単に利用できる。登録済みFeliCaカードをかざして借りる方法と、1回ごとにパスコードを発行してもらって借りる方法がある。後者の場合、スマートフォンなどで会員サイトにアクセスして駐輪場を選択して、駐輪している自転車のナンバーをクリックすれば、予約は完了。4ケタのパスコードが発行される。パスコードは画面に表示されるほか、メールでも知らせてくれる。20分以内に予約した自転車のサドル横にあるユニットボックスの「START」キーにタッチしてパスコードを入力すれば、施錠が解除される。後は電源を入れて電動アシスト自転車に乗るだけだ。

 目的地に着いたら、駐輪場に止めてサドル脇のレバーを下げると施錠される。施錠されたことをメールで知らせてくれる。施錠を解除するには、「START」キーにタッチしてパスコードを入力すればいい。最寄りの駐輪場(借りた駐輪場でなくても構わない)の自転車用ラックに自転車を戻し、施錠して「ENTER」キーにタッチすると、返却が完了する。完了を確認するメールが来るという仕組みだ。

朝晩の利用が多い品川は多く配車

 操作パネルを備えるユニットボックスはサドル後ろに装着されており、GPS、FOMA、カードリーダーなどが搭載されている。ドコモは数分おきの位置データを把握できるので自転車の走行履歴が分かる。駐輪場にはビーコンが備えてあり、一定範囲に自転車が近づくと存在を認識し、駐輪場に戻されたことを確認できる。

 「出発地と目的地が分かるので、どの駐輪場の利用が多いのか少ないのかが把握でき、駐輪する自転車の数の目安にしている」(西川課長)。

 港区では、現在41の駐輪場数を、今年度内に170に増やす計画だ。そうなるとおおむね333m四方に1つの駐輪場ができることになり、利用者の利便性が増す。自転車の台数は1710台に増やす。1駐輪場当たり約10台に相当するが、品川駅港南口の駐輪場は朝晩の利用が多いので、約60台停めている。

 「通勤通学や昼間のビジネス移動など平日の利用が多く、休日が少ない。今後は走行履歴などを参考に、(港区が定めた)自転車ネットワーク整備路線で区内の観光資源を結ぶサイクリングツアーやルートマップなどを企画して、休日の観光利用を増やしたい」と、西川課長は話す。

 ドコモ・バイクシェアはNTTドコモの新規事業として始まった。「温室効果ガスの排出を減らすために、環境負荷の低い自転車を共有する事業をスタートした。公共交通の補完や地域活性化(回遊性向上・観光貢献)、健康増進にもつながる」と坪谷寿一社長は説明する。

 東京都(4区)の2015年度の利用回数は月間6万~7万5000回だった。利用回数は前年比2倍ペースで伸びており、年間約66万回を突破した。さらに、今年2月1日から区を超えた広域での利用を認める広域実験を実施して利便性が向上。5月の4区の合計利用回数は約11万回に達した。

 今年度には、新宿区など3~4区が新たに加わるもよう。自転車走行データがビッグデータになり、将来的には自転車専用道路の整備計画にも生かされる。

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