車や駐車場、家などの遊休資産をいつでも利用できるシェアリングサービスはビッグデータビジネスそのものだ。成功のカギは徹底したデータ活用にある。トヨタも出資した米ウーバー・テクノロジーズは、利用者とドライバー双方の評価や走行履歴といったデータを活用してサービスの品質を担保。月4回以上乗客を乗せるウーバーのドライバーは110万人に達した。

 5月26日、一般のドライバーがお客を有料で同乗させるライドシェアリングのサービスが国内で初めて始まった。米ウーバー・テクノロジーズのスマートフォン配車アプリによって、移動したい人とドライバーをマッチングさせている。

 料金はタクシーの約半分。最初の1.5kmまで480円、それ以遠は1km当たり120円。スマホで簡単に予約できる、とても画期的なサービスに見える。だが、利用できる場所は限られる。乗車は、日本海に面している京都府京丹後市の丹後町のみ。降車は京丹後市内という制限がつく。道路運送法第78乗第2号に基づく「公共交通空白地有償運送」なのだ。

一般のドライバーがお客を有料で同乗させるライドシェアリングが京都府京丹後市で開始。米ウーバー・テクノロジーズの配車アプリを利用する
一般のドライバーがお客を有料で同乗させるライドシェアリングが京都府京丹後市で開始。米ウーバー・テクノロジーズの配車アプリを利用する

 丹後町は京丹後市の中心地から遠く離れた「陸の孤島」。約4割を占める高齢者(65歳以上)にとって利用できる公共交通はあまりなく、国土交通省が特別に認めた。地元のボランティアドライバー18人は、国交省認定の講習会を受講。自家用車を使って午前8時~午後8時まで毎日、お客を同乗させている。

制限付きライドシェアの意義

 「やっとスタートが切れた」

 ウーバージャパンの高橋正巳執行役員社長は、記者会見でこう語った。1年前、同社が福岡市で始めたライドシェアの実験は、国の指導によって中止に追い込まれた。道路運送法へ抵触する恐れが懸念されたからだ。ドライバーへの報酬が違法だとの判断があった。

 だから制限付きとはいえ、ライドシェアのサービスが始まったことは意義深い。ウーバーは、運行主体となるNPO法人「気張る!ふるさと丹後町」とともに課題を1つひとつつぶしていくという。

 丹後町のような陸の孤島は少なくない。今回のサービスが住民の足として定着すれば、制限付きながらライドシェアが全国に広がる可能性はある。

 一方、世界に目を転じれば、ライドシェアのビジネスの急速な普及はとどまるところを知らない。70の国と地域で事業を展開するウーバーは2009年の設立ながら、出資企業が参考にする時価総額は7兆円に迫るもよう。これは約5兆6000億円のホンダや約4兆9000億円の日産自動車など、大手自動車メーカーを上回る。

トヨタがウーバーに出資

 世界最大の自動車メーカーであるトヨタ自動車が金融子会社を通じてウーバーに出資するという5月24日の発表も、ウーバーの勢いを示した。出資比率は1%未満になるもようだが、トヨタはウーバーのドライバーに車をリースする。トヨタなど自動車会社にとって、車の供給先としてウーバーなどライドシェアのドライバーは無視できない存在になった象徴的な出来事だ。

 既に、月4回以上乗客を乗せるウーバーのドライバーは110万人に達しているという(今年4月現在)。

 ウーバーが世界で急成長している理由は通常のタクシーよりも安く、車がキレイでドライバーが親切であること。そして、アプリで簡単に配車依頼ができ、その場での支払い作業は不要で、領収書がメールで送られてくるという便利さだ。

グーグルとウーバーの共通点

 車がキレイでドライバーが親切なのは、ウーバーがビッグデータを活用して、サービスの品質を担保しているからだ。

 ウーバーが利用者とドライバーの間に立ってスムーズなマッチングをすると同時に、利用者とドライバー双方の評価や走行履歴といったデータを収集して活用している。例えば、ドライバーが遠回りをしたら、その分料金を返金してくれる。ウーバーがドライバー用スマホアプリを通じて、走行履歴データを把握しているからだ。データ活用で実現するこの快適な顧客体験が利用を促進する。

ウーバー・テクノロジーズのサービスモデル
ウーバー・テクノロジーズのサービスモデル

 ウーバーのようなシェアリングサービスのビジネスモデルは、米グーグルと類似している。

 シェアリングサービスとは、個人が所有する車や家、服などをはじめとする遊休資産や個人のスキルなどを貸し出すサービスだ。所有者が利用していない状況を正確かつリアルタイムに把握でき、利用したい人と瞬時に結びつける。遊休資産と利用者数の最大化、需給のマッチングアルゴリズムの精度が事業拡大のカギを握る。

 グーグルは「Android」でスマートフォンを普及させてネット利用者層を広げている。一方で、街や店舗、商品など、あらゆるアナログな情報をデジタル化してデータ化している。そして、利用者がある情報を求めた瞬間に、アルゴリズムで的確に結びつけて広告収益を稼ぐ。

 シェアリングサービス、グーグルともに利用者数(需要)と遊休資産や情報量(供給)の最大化、そしてそのマッチング回数の増加が稼ぐ仕組みになっている。ネットの事業モデルが、IoT(Internet of Things)やスマホの広がりで、リアルな世界にも広がっている。