ソフトバンクは家庭向けのIoT(Internet of Things)の新しいサービスや製品の開発に乗り出した。住宅リノベーションやIoT家具のベンチャーなどと組み、今秋まで実際の家庭でテストマーケティングを実施する。スマートフォン以外で生活者への新たな接点を見いだす。

 今年3月に発表した協業プログラム「SoftBank Innovation Program」の1次選考で採択した、住宅リノベーションのリノべる(東京都渋谷区)、IoT家具のカマルクホールディングス(シンガポール)、セキュリティシステムを提供するアッサアブロイジャパン(東京都港区)の3社を中心に一般家庭での共同実験を始めた。

 リノべるとはスマートハウス用のアプリを共同開発した。住宅内のIoT機器を統合的に管理して連携させることができるようにしたほか、収集したセンサー情報などを分析して家の中がどのような状態にあるのかが分かる。連携するIoTデバイスの企業も開拓していく。

 カマルクはセンサーを埋め込んだ扉などを開発しており、実験家庭の高齢者の生活を見守ることなどを想定している。ソフトバンクはこのほか各社とセンサーを活用したセキュリティやヘルスケア、ペット管理などについて検証しており、「実際に家庭で受け入れられるものかどうかを見極めたい」(パートナー事業推進室イノベーション事業部イノベーション推進課の工藤景司氏)と言う。

 IT系のベンチャー企業を傘下に多く持つソフトバンクだが「スマホ以外に家庭へと入り込めていない」(イノベーション推進課の原勲担当課長)という課題があった。

ソフトバンクが採択した企業とテストマーケティングの内容
ソフトバンクが採択した企業とテストマーケティングの内容

 今回のテストマーケティングの対象家庭は、リノべるが持つリフォームの顧客基盤から選んだ。詳細は明かされていないが、3社のほかにIoTデバイスなどの約5社が参加して、およそ30の家庭で行っているという。

都市交通分析は販売を開始

 一方で米アーバンエンジンズの都市交通の分析サービスは、ソフトバンクが国内での販売を始めている。同社は米グーグルの元研究者らが設立した企業で、都市の交通に関するビッグデータ解析処理と可視化に強みを持っている。「データが欠損していても適切な分析ができ、大量のセンサーデータも高速に処理できるといった点を評価した」(原担当課長)。

アーバンエンジンズのバス交通分析サービス。仮想のデータを基にして、ブラジルサンパウロの過去の交通状況を可視化している。
アーバンエンジンズのバス交通分析サービス。仮想のデータを基にして、ブラジルサンパウロの過去の交通状況を可視化している。

 バスであればGPS(全地球測位システム)による位置データ、乗客のICカードの利用データなどから、効率的なルートや運行ダイヤ、ドライバーの最適配置の条件を見いだすことができる。図はブラジルのサンパウロにおけるバスの交通状況を、仮想のデータを基に再現したものだ。乗車時のICカードの情報から、降車場所を機械学習により見いだしている。バスのほかタクシーや運輸会社などに売り込んでいく。

 今回のプログラムはIoT分野を中心に、174社が応募し半数が海外企業だったという。採択した企業に出資するかどうかは個別に判断する。テーマを変えて今年夏にも実施する予定だという。

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