不動産のリソースを有効活用する新しいビジネスに、IoTや人工知能(AI)を活用するベンチャーが続々と参入している。ITやビッグデータの活用によって新たなビジネスモデルを生み出そうとしている。

ライナフのスマートロック
ライナフのスマートロック

 その1社がライナフ(東京都千代田区)であり、インターネット経由でカギの解錠や施錠ができるスマートロックを自社で開発している。そのスマートロックを活用して、賃貸物件の内覧を可能にするサービスをビルオーナー向けに提供している。料金は100室の場合でサービス利用料が月額5万円程度(初期費用は別)。

 「スマートロックのハードだけでは差異化に限界がある。不動産のデータを有効に活用して付加価値を生み出したい」(滝沢潔代表取締役)として、不動産の有効活用のサービスまで手掛けるのが特徴だ。滝沢氏が大手不動産会社出身でそのノウハウを活用している。

 まず昨年9月、三菱地所グループと組んで、顧客だけで現地を訪れて賃貸物件を内覧できる「スマート内覧」のサービスを本格的に始めた。

 従来は不動産会社などが顧客が内覧したい物件の大家や管理会社を回ってカギを集めて回り、顧客の内覧に同行する必要があったが、その手間がなくなる。

 三菱地所グループが持つ一部の空き部屋にスマートロックを設置しており、現在は100室程度がスマートロックを使って内覧できる状態だという。スマート内覧に移行した結果、「夜遅くても見ることができるなど利便性が高まり、内覧の件数が2.5倍程度に増えた」(滝沢氏)という。

ガラケーでも鍵の解除が可能に

 ライナフの内覧サービスには2つの特徴がある。

 まずは「カギ」を誰でも簡単に扱えるようにしたことだ。

 スマートフォンであれば、物件の玄関まで行って顧客の会員ページから解錠を指示できる。従来型の携帯電話でも、発信者番号通知をオンにして専用の番号に電話をかけるだけで解錠の指示ができる。

スマート内覧のアプリでカギを開けようとしているところ
スマート内覧のアプリでカギを開けようとしているところ

 2つ目が室内に自社開発のタブレット端末を置き、様々な機能を持たせたことだ。

 内覧者がセンター側の担当者にリアルタイムに質問できるだけでなく、センター側からも内蔵カメラを利用して室内の状況を確認し、セキュリティに配慮している。

 6月にはAIの活用に乗り出す。仲介業者が内覧する際、現在は予約サイトで物件名を検索して登録しているが、これを音声で予約できるようにする。「通常の名詞に比べて、マンション名は認識が難しい。そこでマンション名を学習させて認識精度を上げた」(滝沢氏)。

「会議室シェアリング」にも応用

 ライナフはスマート内覧を昨年2月から試験運用し、同年7月にはその仕組みを横展開した「スマート会議室」のサービスも始めた。

 貸し会議室の予約や解錠ができるサービスで、住友不動産ベルサールと組んでサービスを始めた。顧客が予約サイトで予約を完了すると、予約番号と暗証キーを発行。これをサービスサイトで入力するか、スマート内覧と同様に電話をかけることで部屋を解錠できる。

 スマート会議室の仕組みは、ビル内の空きスペースを貸したい地域の事業者も利用し始めている。「あらゆるスペースを30分や1時間だけ貸したいというニーズにも応えていきたい」(滝沢氏)。

 利用者が増えることで、そのスペースの需要がビッグデータから見えてくる。滝沢氏は「場所や季節、時間帯などの需要を把握し、適切な貸し出し価格を算出して提案できるエンジンを開発したい」と意気込む。

アプリで室内スペースを“拡大”

 中古マンション向けのリノベーションを手掛けるリノベる(東京都渋谷区)は、宅内でIoTサービスを活用するためのスマホアプリの提供を昨年10月から始めた。

 ソフトバンクによるIoT関連の協業プログラム「SoftBank Innovation Program」で採択された案件で、アプリ「Connectly App」を開発した。リノベるCS事業部新規事業チームの木村大介氏は「住む人に本当に便利で使い続けてもらえる機能を随時追加していく」と話す。

 今年4月に開始したのは、宅内の荷物を段ボールに詰めて倉庫に預けられるサービス「クローゼット」だ。寺田倉庫が提供する、収納サービスのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を活用して開発し、Connectly Appから利用できるようにした。

リノべるのアプリで荷物を預ける指示をしているところ
リノべるのアプリで荷物を預ける指示をしているところ

 利用料金は縦横高さの合計が120cmの120サイズの場合、月額300円、取り出し時のみ送料800円がかかる。「リノベーションをしたがスペースが足りない顧客でも、荷物を預けることで、空きスペースを確保できる」(木村氏)。

リノベるのリノベーションを利用し、14個のHueを導入した顧客(東京都江戸川区)。宅内すべてのLED照明の色味や明るさをテーマに応じて一瞬で変えられる
リノベるのリノベーションを利用し、14個のHueを導入した顧客(東京都江戸川区)。宅内すべてのLED照明の色味や明るさをテーマに応じて一瞬で変えられる

 さらに6月中にはアプリからフィリップスのLED照明「Philips Hue」を制御できるようにする予定だ。リノベるはこれまでもリノベーションの顧客に対して、Hueの設置や設定を支援していた。現在はフィリップスのアプリで制御しているが、設定や操作が難解だという。「容易に設定できるようにしたうえで、他のアプリや生活パターンと連携させて便利にしたい」(木村氏)。

 Connectly Appは宅内に置いたユカイ工学(東京都新宿区)の小型ロボット「BOCCO」と連携し、家族が帰宅する時間を教えてくれたり、外出時刻や天気を伝えてくれたりする機能も備えている。

 リノベるは、本アプリを通じてリノベーションの提案の強化につながり、リノベーション後もHueのようなIoT商材やクローゼットのようなサービスを販売することにより収益力を強化することを狙う。

 不動産関連各社がIoTを活用したサービスを提供し、顧客とつながり続けてデータによる把握を実行に移し始めた。一方で、宅内には米アマゾン・ドット・コムなどネット大手がAI搭載のスピーカーで入り込もうとしている。AIやアプリの更新で、顧客個別のニーズにどれだけ応えられるのかが成否を握りそうだ。