エブリセンスジャパン(東京都港区)、空調機器を手掛ける高砂熱学工業、富士ゼロックス、リコーなど7社は4月、センサーのデータを利用してオフィス内の環境を予測する実験を始めた。デジタル複合機を活用し、オフィス内のセンサーデータをインターネット経由で集約。オフィス内の温度などの環境が適切かどうかを判断するほか、取得したデータを分析することで空調機器の異常についても予測する狙いがある。

同じエリアにあるオフィスや屋外の気温と比べることで、対象となるオフィスの空調機器による暖房や冷房の設定が適切でないことを見いだして、警告を出す。さらにデータを分析することで、空調機器が適切な温度を保てないなんらかのトラブル状態にあるといった問題を予測し、保守要員を派遣するといったことを考えている。
具体的には、エブリセンスの小型のセンサーモジュール「EveryStamp」を各社のオフィスに設置。1~5分間隔で温度、湿度、気圧、CO2濃度、照度、紫外線などのデータを取得して、同社のIoTデータの交換サービス「EverySense」で集約したうえでビッグデータとして分析する。
オフィスにある空調機器の多くは、インターネットなどで外部と接続していないケースが多いという。さらに「室内にセンサーを後付けしても、セキュリティの面などからリアルタイムに送信することが難しい」(エブリセンスジャパンの真野浩代表取締役最高技術責任者)といった課題があった。
そこで既にインターネット環境に接続されているデジタル複合機を活用することにした。実験環境として、高砂熱学、富士ゼロックス、リコーのそれぞれ神奈川県内の事業所においたデジタル複合機に、合計60台以上のセンサーモジュールをWi-Fiでつないでいる(写真)。
最終的な結果を踏まえたうえで、取得したセンサー情報は企業や個人などが特定されない形に加工し、データとして販売することも検討している。「例えば、従業員の健康にいい条件が分かれば、そうした環境に保つための設定データを提供できるかもしれない。企業の健康保険組合であれば健康増進による医療費削減という効果があり、データの価値を認めやすい」(真野CTO)。
環境情報を取得するセンサーモジュールのほか、今後従業員に身につけてもらうウエアラブルのセンサーで人流や音の情報を取得し、分析していく予定だ。オフィスの環境と従業員の作業効率などの相関を調べたり、人流分析から何か新しい知見が得られないか見いだしたりしていく。
今回の実験には4社のほかデータ分析でインフォコム、センサー製造で日本アンテナ、データセンター運営でブロードバンドタワーが参加する。オフィス環境のほか一般家庭での試験も計画している。今後、四半期に1回程度をめどに結果を報告していく見通しだ。