ミサワホームはIoT(Internet of Things)を活用した住生活サポートサービス「LinkGates(リンクゲイツ)」の提供を6月に開始する。基本料金は9万1800円で月額利用料は不要。今後追加する有償サービスの基盤とすることを見据えて、戦略的に安価な値付けをした。
LinkGatesは、外部からの電気錠の施錠やエアコン操作、水道の使用量監視などが可能で、センサーや無線通信などを使って家をスマート化するサービスだ。
新サービス提供の狙いは、顧客との長期的な関係構築と新たな収益モデルの開発だ。
LinkGatesはミサワホームが2年前に立ち上げた部門横断の「ホームOSプロジェクト」から生まれた。OSとは「オーナーサポート」と「オペレーティングシステム(基本ソフト)」の2つを意味しているという。
商品開発部木質設計一課課長兼ホームOSプロジェクト課長の石塚禎幸氏は「オーナーサポートを強く意識している。リフォームしながら長く住み続けていただくために、家の状態をモニタリングし続けて、不具合があればこちらから先行してリフォームを提案するなど、常にお客さまとやりとりができる関係を築いていきたい」と語る。
LinkGatesは様々な住生活サポートサービスを提供するOSとなるわけだ。
鍵の開閉状況をスマホで確認
これまで、エネルギー使用の見える化や効率化の助言といったHEMS(家庭用エネルギー管理システム)の機能を「エネココ」という名称で提供してきた。太陽光パネルを導入した入居者の4割の顧客が購入するケースが主だったという。
今回のLinkGatesでは、これまでエネココで提供してきた省エネ機能に加えて、「安全」「安心」「快適」といった生活に根付いたサービスを展開する。
「安全」では、電気錠の開閉状態をスマートフォンで確認できたり、玄関ドアを外部から施錠できたりする機能。「安心」では、温湿度センサーのデータを解析し熱中症の危険度をアラートしたり、水道の使用量を監視し一定時間使用がなければ知らせる高齢者見守り機能を提供する。
「快適」では、エアコンや給湯器の遠隔操作。そして、部屋の熱だまりを自動で感知してトップライトを開けファンを回すことで排熱し、冷房負荷を減らしてからエアコンを稼働させる涼風制御システムなど多岐にわたる。こうした付加サービスを利用するためのセンサー類を導入すると、初期費用は合計で20万円程度になると見込む。

「機器との通信には、エコーネットライトやJEM-Aといった汎用的な規格を採用している。動作確認の負荷もあって推奨メーカーを決めてはいるが、エアコンでも電気錠でも様々なメーカーのものが動かせるのが特徴だ」と、調達開発部資材開発一課主幹兼商品開発部ホームOSプロジェクトの後藤伸希氏は説明する。
これらのサービスは顧客向けサイト「ミサワオーナーズクラブ」と専用のスマートフォンアプリを通じて一元管理される。
部屋ごとの温度や湿度といった様々なデータを確認できるモニタリング機能、異常アラートのプッシュ通知、外部からの機器の遠隔操作など、全ての機能が集約されている。
有償サービスも今年度中に
IoTのプラットフォームはミサワホームが独自に構築した。データの蓄積やアラートの連携、操作画面などが管理されている。家に設置されるホームゲートウェイがインターネット経由でこのプラットフォームとの連携を図るという仕組みだ。
「こういった統合的な生活サポートサービスを提供しているハウスメーカーは他にはない。そこが差別化になると考えている。これらを他の仕組みを利用せずにオリジナルで開発するというのは大きな判断だった。一度始めるとずっと続けなければならない。ハウスメーカーとして、入居者の命を守る仕組みや長期居住に寄与する仕組みのところは、自分たちでしっかり提供していこうということになった」と石塚氏。
年間販売目標は2500台。これは最低ラインで、今後は既存住宅のリフォーム顧客への販売や他社への外販も検討していくという。
石塚氏は、「月額利用の有償化も今年度中にスタートしたいと考えている。戸締りアラートと警備会社を連携した駆けつけサービスの実現や、外部からの遠隔操作など、どういったサービスが付加価値として感じてもらえるのか整理しているところだ」と今後の展望を語る。
国内市場の縮小が見えている今、製品の売り切りモデルから、IoTを活用して顧客とつながりを持ち続けてサービス業へ転換する。LinkGatesは住宅業界における意欲的な事例として注目される。